ベトナムのマクロビジネス環境 ~実質GDP成長率7パーセントの高成長エリア~

前回の特集「ベトナムに進出する」はこちら

さて、今回のコラムから、ベトナムの「今」のビジネス環境をつぶさに観ていくこととしよう。

以下に掲げるコンテンツのうち、数値データーは、2019年末時点(コロナ禍が勃発する直前)の、ベトナム計画投資省発表 ベトナム国勢調査とEOE調査で公開されている公式データーに基づく。

ベトナムの総人口は2050年まで増大を続け、人口ピラミッドの黄金期は2040年まで続く

ベトナムの総人口は、1,648万人(在外ベトナム人を含む)。

日本は、既に人口減少に入り、少子高齢化が進行し、経済力が低下に向かっている国家である。中国もまた、日本のあとを追いかけている。一方、ベトナムは2009年~2019年で1.14%増と、人口増大国家である。

2050年まで、ベトナムの人口は増加し続け、2050年段階で、1億1000万人に至ると予測されている。国民平均年齢は、31歳と極めて若く、労働人口も増大し続けると予測される。その結果、ベトナムでは、人口に占める稼ぐ力を示す人口ピラミッドは、2040年まで黄金期が続くと予測されている。

つまり、今後、日本は、ベトナムに人口と労働人口で追い抜かれることになり、ベトナムは、2020年代から30年かけて、現在の日本と同様の内需が生み出される領域まで進むと予測できるエリアである。そして、2020年から少なくとも20年間、ベトナムの消費は、黄金期が続くわけである。

とりわけ、ホーチミン市やハノイ市などの都市人口は、年平均2.64%で増大をしており、農村部から都市部に若者をはじめとする人口が流入をしていることが統計上、明らかになっている。

日本のように、ここから、人口が減少し、生産者人口割合が減り続ける少子高齢化社会では、企業は、「下りのエスカレーターに乗っている」状態で、マクロの消費が減少することは間違いない。

一方、ベトナムには、「上りのエスカレーターに乗っている」状態を企業が享受できる有望な市場と、市場が成長する未来がある。

GDP成長率7%が維持される、高い経済成長国家

ここで、ベトナムの、コロナ禍前の経済成長率をみてみよう。
国民一人当たりの名目GDPは、2017年2,373ドル、2018年2,570ドル、2019年2,715ドルと推移している。一方、ベトナムは、インフレ抑制策を政府が力を入れえており、成長率が高いわりに、インフレ率が2%程度と比較的低い。

そのため、名目GDPから、インフレ率を差し引いた実質GDP率でも、7%の成長率を維持している。既に、中国が公表する名目GDP成長率が公表通りであると仮定しても、6%台であることから、経済成長率は、ベトナムは中国を抜いている。
今後、中国が、日本の後を追うように、少子高齢化の道をたどることが確実で、米中関係の悪化などの政治的な要因のリスクをとると、ベトナムの成長期待は、中国を上回るのではないだろうか。

日本との二国間協定 ~RCEPが稼働開始~

では、ベトナムと日本の二国間関係は、どんな状況だろうか?

近年で最も注目すべきは、東アジア地域包括経済協定(RCEP)だろう。そのRCEP各国の中でも、2020年10月、菅総理大臣が、初の外遊国に選ばれたのが、ベトナムだった。新型コロナ禍からの脱却時に、日本のトップが最も関係を強固にしたいと考えた国だったといえる。

日本とベトナムは、二国間協定のみならず、様々な国際条約にてパートナー関係を構築しており、関税・所得税・貿易・電子商取引・技術協力・人材・投資などの幅広い面で、国際関係ができている。

ベトナムに対する日本からの輸出額は、16,494,000,000ドル。ベトナムから日本への輸入額は22,495,000,000ドル。日本からの新規投資件数は、435件と韓国・中国に次いで、第3位。韓国・中国は、今後、日本からの新規投資件数が伸びていく伸びにくい国際環境にあることを考えると、ベトナムは、今後、日本企業が最も有望な投資先の国になっていくと予想される。

リスクは、法制度と行政

以上のように、ベトナムはマーケットとして非常に有望で、しかも、日本との関係は良好である。では、もろ手をあげて、ベトナムが、ビジネスの進出先として、推薦できるかというと、そう簡単ではない。

チャンスだけを単純に信じ込んで、リスクを想定しないのは、愚かな経営の行動である。

今度は、リスクの話をしよう。
ベトナムのビジネス上の最大のリスクは、法制度と、行政にあると言えよう。

ベトナムは、これまでの歴史のコラムでも述べてきた通り、フランスやアメリカの支配を戦争で撃破した共産党が一党支配をする国である。欧米を帝国主義と捉え、それを権力の権力集中によって撃破した歴史の国なのである。日本や欧米のような、三権分立の自由主義的国家では全くない。

立法権も行政権も共産党の意思で動いており、司法制度は裁判所ではなく、国会によって司法権限が行使されている。日本の違憲立法審査権のように、政治部門に対する司法のコントロールはきいていない。従って、人権が保障されていないと言っていい。まして、日本のように、自然権思想に従って、外国人に、日本人と同様の人権を保障するなどということは、全くない。
判例法は存在せず、制定法のみが法源で、法制度も非常に流動的であり、行政権を行使する公務員も恣意的である。

そのため、裁判の基準は、全くなく、恣意的な解釈で裁判も行われ、行政の恣意的な運用に制度的な歯止めが効かない。あくまでも、共産党の自己統制によっているのである。

最悪なことに、裁判も、仲裁も、現実的には、贈賄などの不正腐敗は常識で、外資系企業が訴訟に訴えても、まず、勝てない。仮に勝てたとしても、仮処分や仮執行は、一切機能しない。外国企業が、現地の弁護士に依頼しても、テキトーに、示談に持ち込まれ、極めて不本意な結果を出され、高額の報酬だけ、請求されることは普通だ。

行政も、不正・腐敗にまみれており、許認可や行政手続きも、日本人が立ち入れない闇が存在している。

しかし、これは、ベトナムだけが特殊なわけではない。経済的な成長著しい新興国は、どこも、似たり寄ったり。この法律や行政のカオスを、充分、アタマにいれて、進出を考えなければならないのである。

日本のように、筋が通っていれば勝てる、あるいは、正しい手続きをすれば通る、行政は手続きを期限付きで進めるという、社会ではないことを充分念頭におき、ベトナムで通用する方法で、ビジネスを進める必要があるのだ。

裏をかえせば、コンプライアンスを厳重に守る必要がある大企業よりも、機動的にオーナー経営者が柔軟に経営を進めることができる中小のオーナー企業が、ベトナムなどの新興国に精通した進出コンサルタントを通して進出するほうが、上手くいくことが多いと言えるのだ。

そういう意味で、ベトナムは、今後、機動的な中小企業が、硬直的な大企業に勝てる可能性があるマーケットだと言える。

続く

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