今の中国を知る
新聞では、盛んに米中両国の貿易摩擦に関する記事が出ていますね。中国は、やはり共産党一党独裁国ですし、日本人にとっては、ちょっと苦手な国ですよね。
日本人は、どうしても、中国や韓国の人は、自分たちと「肌の色」が似ているため、自分たちと発想や考え方も似ているのではないかと本能的に思う節があるのお。
但し、この傾向は、日本人が海外進出をするときに、危険なのじゃ。
中国の人も、韓国の人も、我々日本人とは、まったく別の歴史を経験し、まったく別の国家体制を持っている。だから、自分たちと似ているはずと決めつけず、欧米やイスラム諸国と同様、相手を客観的かつ冷静に分析して、ビジネスなどの関係構築をしなければならんとワシは思うのじゃよ。
はあ・・・。
では、今の中国って、「客観的かつ冷静」に分析すると、どんな国なんですか?
かつて、中国は、毛沢東による文化大革命を経験し、その反省から、鄧小平が主導した「先冨主義」で高度成長を遂げた国じゃった。先冨主義とは、経済成長のスピードをあげるため、先に豊かになれる人は、どんどん先に豊かになりなさい、という、つまりは格差容認論じゃな。その発想のもと、「世界の工場」として、どんどん外資のメーカーを受け入れたわけじゃ。
経済成長のためには、外資の力を積極的に利用し、有り余る労働人口を武器に、急成長を実現したのじゃのう。
しかし、この時代は、もう終わった。
習近平は、汚職撲滅で政敵を排除し、毛沢東時代と同様の終身権力の座に就くことに成功した。この基盤を基に、一帯一路というグローバル化の政策を強く世界に押し出しておる。
そして、今の中国内部にも大きな地殻変動が起きておる。北京や上海といった、政治や経済の中心地から、深圳というイノベーションの中心地に中心都市が移りつつあるのじゃ。
あたかも、アメリカで東海岸のニューヨークから、西海岸のシリコンバレーに中心都市が移ったように。
今の中国は、「世界の工場」から「創新」の大国(‘創新は、中国語で“イノベーション”の意味)へ、大きく進化しつつある。
例えば、中国でのスマホ決済は、アリババ集団やテンセントが参入し、猛烈なスピードでQRコードを使ってコンビニやスーパーで行えるように進化した。今の中国では、屋台での買い物や路上ミュージシャンへの投げ銭も、スマホ決済で行えるほどじゃ。ヒトの生活や街の様子は劇的に変化している。
自由主義・民主主義と経済成長
でも、やはり、中国では、アメリカや日本とは、政治体制が違うじゃないですか。
中国にいくと、監視カメラ、やたら多いし。中国の国民や企業は、国家に監視されて、国の思惑通りに動くように感じますが?
確かに、中国は、日米欧の先進国のような自由主義・民主主義国家ではないのお。
しかし、自分たちと相手が、政治体制も似ていなければ、ビジネスが出来ないと思うことは、グローバリゼーション発想とはいえぬぞ。
確かに、お主が言うように、日経新聞の報道によれば、中国には、今、1億7000万台の監視カメラが設置されておるそうな。これで、14億人の中国人を監視しておる。顔認証のビックデーターをデーターサイエンス手法で分析し、ディープラーニングを続けるAIが、政権に危険な人物を統計学的に分析し、監視するという、極めて不気味な「監視国家」であることは明らかじゃ。
思想及び表現の自由が憲法上保障されている我々日本人から見れば、このような国の企業と組めるのか、と、思うかもしれない。
中国企業の「創新」
しかし、それでも、ワシは、このような中国の政治的な情勢とは別に、今の中国企業が見せる、目覚ましい進化に注目しておるのじゃ。
創新のスピード、創新の質、創新の密度。
このすべてで、中国企業は、今、他の国の企業、もちろん日本企業も、圧倒しておる。
一つ例をあげよう。
パナソニックは、家電スタートアップ企業のCerevo(東京都文京区)から事業譲渡を発表したが、これは、Cerevoの開発や量産準備のスピードが超速の、深圳企業との連携が強かったからじゃ。
つまり、スタートアップ企業でも、中国企業との連携で、企業価値を格段にアップさせることができる、という事例じゃよ。
今、日本企業は、日本というマーケットの将来に大きな不安を抱えておる。同時に、労働生産性も、思い通りに高まってこない。
日本政府が鳴り物入りで進める、働き方改革は、労働生産性の向上なしに国民の目先の関心時としてだけで進めば、単なる「働かない国ニッポン」を生みだすだけじゃ。
そんな中、中国の安い労働力を求めていた時代から、進化する「創新」を続けるパートナーを求めて、日本企業が中国を捉える発想は非常に重要なソリューションとなるわけじゃ。
中国企業と取引する場合の注意点
なるほど。
でも、そんな中でも、日本企業が注意しておくべき点も、きっとありますよね。
もちろんじゃ。知的財産権をこちらの承諾なく使われたり、売り上げの回収ができなかったり、ということは、中国企業に限らず、海外企業との提携では、注意しなければならない点じゃな。
こういったリスクに備えつつ、それでもなお、可能性を追求する発想が、グローバル企業としては重要じゃ。リスクを踏まえ、そのうえで、チャンスを追求するのが企業じゃからのお。
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名古屋発貸会議室企業の社長が取り組む、中国優良企業との提携戦略
KCC株式会社 遠藤陽介社長

競争の激しい、この業界にあって、事業ライフサイクルの初期段階から、一貫してレンタルオフィスと貸し会議室事業に取り組んでこられた遠藤社長が、中国企業との提携の模索をはじめられたのは、約3年前。日本企業が中国エリアで会議を行うための総合サイト「台湾会議室」「上海会議室」「香港会議室」を相次いで開業。これまでに中国主力都市3拠点での、貸し会議室ビジネスに進出されたことになる。中国の優良なレンタルオフィス企業と相次いで提携を進める遠藤社長に、中国企業とのビジネス提携のご経験談と、将来性をお聞きする。
中国マーケットと中国企業 攻略の際の法的注意点
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
TandemSprint,Inc.代表取締役 小野智博先生

2017年、カリフォルニア州に日本企業のアメリカ進出とアメリカ企業の日本進出を支援する、TandemSprint,Inc.の代表取締役に就任。
2018年、弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所開設。現在、代表弁護士。
日米双方向の進出を総合支援するコンサルティング会社の代表取締役と、日本の渉外弁護士事務所の代表の「二足の草鞋」で前進する、異色の弁護士 小野智博先生に、中国企業との提携をはじめとする、企業の海外進出に際してのリーガルリスクに関するお話をお聴きした。