敬虔なイスラム教国マレーシアの首都クアラルンプールの、夜の「男の街」をさまよい歩く

クアラルンプール居住のツワモノY君のエスコートで、夜の街に繰り出す

まずはマレーシア在住の事業家のY君のストーリーから

僕が、今のURVグローバルグループを創業して独立する前のことから、今回のコラムの話は始まります。

僕は、当時ある日本の大手企業グループ資本の、海外進出支援コンサルティング企業を創業し、そこの企業の取締役に就任していました。その僕が取締役を務める企業に、大学を卒業し、新卒で入社してきた、Y君という社員がいました。

この大手企業グループは、新卒を毎年数十名規模でまとめてグループ全体で採用し、グループ所属の企業に配属させる仕組みをとっておりました。そして、その年Y君は、僕が率いる会社に配属されることになり、彼にとって幸か不幸かはわかりませんが、僕が推進する事業の担当として、僕の直轄の部下に配属されました。

大学を卒業し無色に近いY君を、僕は数年間、直轄の部下として鍛え上げました。そして、僕のビジネスのDNAとマインドを移植しました。

その結果Y君は、僕に似た大企業の社員に収まり切れない、ツワモノに成長しました。

僕が独立して、URVグローバルグループを造って、その企業グループの取締役を退任した後、Y君は20代後半で、この企業グループのマレーシア海外現地法人の社長にまで抜擢されました。

自分で単身、マレーシアに乗り込み、現地で事業をゼロから構築することを託されたY君でしたが、結局、よく大企業の海外進出に「あるある」の問題がおきました。現地の事情を理解しない日本の本社と衝突したのです。結局彼は、僕の後を追うようにして、このグループから飛びだしました。

そして、マレーシアのクアラルンプールの居住者のまま、マレーシアで自分独自の事業を構築しはじめました。

コロナ禍で、多くの海外在住の日本人が怯えて日本に引き返す中でも、Y君は、冷静に事業を拡大し続けました。

そして、2023年時点で、マレーシアのクアラルンプールで、飲食事業と、日系人を顧客にする生活機器の代理店事業という、二足の草鞋で事業を営み、事業投資を行うまでに、個人資産を構築しました。

多角的な事業に投資を行い、リスクを分散して、事業家と事業投資家の二つの顔をバランスよく使い分けるY君の手法は、僕がURVグローバルグループを成長させる方法と同じ、仕事の進め方でした。その意味でY君は、僕の「よき弟子」だった男です。

彼は、昔の上司であった僕の手法をよく学び、その手法で、自分の事業と資産をしっかりと構築をするまでになりました。大学を卒業してから、10年強しかたっていない、30代前半という年齢で、既に複数事業でリスクを分散して収益をあげ、Y君の個人資産は、税金が極めて安いマレーシアで、すでに円換算では、数億円規模に達しています。

Y君と僕の今の関係

今やY君は、僕にとって、東南アジアからインドにかけての、重要な現地情報源であり、事業のパートナーでもあります。僕よりも、20歳以上若いY君は、事業規模と個人資産で、僕を目指して追いかけてきており、僕もまた自分よりも活動力と機動力があり、若い感性の事業家であるY君の事業センスは、貴重な戦力となっています。

僕が、URVグローバルグループの東南アジアの本拠地であるシンガポールから、クアラルンプールに立ち寄ると、Y君は、律儀にもクアラルンプール国際空港まで車を飛ばして、迎えにきてくれます。

クアルランプールは、タクシーがメーターをつけておらず、料金が相対交渉で決まるため、外国人がタクシーに乗るとぼったくりに会うのが、普通なのです。

クアラルンプール市内から相当な距離があるクアラルンプール国際空港から、市内のホテルに行くのがなかなか難儀である僕にとって、Y君の送迎はとても助かるわけです。

今でも僕を、「人生の中のただ一人の上司」と認めてくれている高所得者のY君にドライバーをさせてしまうことから、クアラルンプールに在住している間の夜は、僕がY君に、いつもご馳走をすることになります。

30代前半の日本人で仕事が出来て、カネが有り余り、プール付きの邸宅に一人で住む独身のY君は、ルックスもまたジャニーズ系のイケメン男子。そんな、男を、経済成長著しいクアラルンプールに集まってくる、野心溢れる世界中の貪欲な肉食系女子たちが、放っておくはずがありません(笑)。

男にとって、事業に対する攻撃力というのは、ぼぼ性欲と連動して正比例しているわけで、こんなY君が、遊びに対しておとなしいはずがもちろんありません。

そのため、クアラルンプールでは、若くて精力が有り余っているY君が案内してくれる店で、僕ら二人はディープな夜を過ごすことになるわけです。

今回のコラムでは、クアラルンプール在住のツワモノのY君が案内してくれる、とびっきり怪しい店をご紹介したいと思います。

【一次会】クアラルンプールの屋台街「ミッキーマウスの店」で、スコールの洗礼を浴びる

赤道直下で、年中真夏のマレーシアでは、各所に屋台街が広がっています。

赤道直下の都市で、朝から夕方まで動き回ると、身体は激しく水分を欲します。

仕事が終わり、飲み始めの一店舗目は、そんな屋台街のうまい中華の店で、冷たいビールを一気呑みするところからはじまります。

Y君が、中華系の人脈と通っているという、クアラルンプール中心街に近い屋台街の中には、とびきり怪しい店もあります。

Y君が、仲間たちとよく待ち合わせに使うという彼が「ミッキーマウスの店」と呼ぶ店で、ビールをあおります。

この店の看板には、なんとあのミッキーマウスが描かれています。ミッキーマウスは、言わずと知れた、ディズニーが著作権を有するキャラクター。ディズニーは、世界で最もコンプライアンスに厳しく、無権限でキャララクターを使用すれば、強烈な法的な手段が飛んでくることで有名な企業です。

世界で、ディズニーの権利を侵害することは、最もやってはいけないタブーです。

しかしながら、この屋台街では、そんなことはお構いなし。堂々とミッキーマウスを盗用して、看板に掲げています。

おかげで、ミッキーマウスの店と言えば、誰もがわかるくらいに目立つため、ここがY君たちの仲間内での待ち合わせ場所になっています。

そんなコンプライアンス無視の店ですが、店の料理の味はとびきり旨く、店はいつも大繁盛。店に入りきれないお客のため、道路にまで椅子とテーブルが広げられている状態です。店員も大忙しで、注文をするには、大声のマレー語で怒鳴らないと、注文すら取りに来てくれません。

その日も、そんな「ミッキーマウスの店」の道路を勝手に占拠したテーブルと椅子を、Y君が陣取り、店員をマレー語で怒鳴りつけながら、ようやくビールと中華料理が、テーブルの上に並びました。

ビールで乾杯をして、料理を食べ始めた時。

首筋に、冷たい水を感じました。

Y君:「松本さん、やばいです。スコールです。避難しましょう!」

避難するって言っても、店の中は満席状態。どうしようかと思った瞬間。猛烈なスコールが、一瞬で襲い掛かってきました。

赤道直下の国のスコールは、日本の雨とはまったく違います。瞬間的に滝のような激しい雨で、全身が一瞬でずぶ濡れになります。

生ビールのジョッキが、スコールで溢れだし、料理は全部、大洪水の中に飲み込まれてしまい、かろうじて僕たちはずぶ濡れになりながら、店に避難し、料理や酒が、スコールで台無しになりました。そんな状態を、Y君と僕は、ゲラゲラ大笑いをしながら、見つめているほかありませんでした。

この国では、こんなことは、日常的に起きるのでしょう。誰も気にすることなく、20分程度で、スコールはからっとあがりました。熱帯では、スコールがふると、気温が一気に下がり、気持ちのよい夕暮れが訪れます。僕たちは、ずぶ濡れになった道路に広がるテーブルや椅子をふき、スコールの雨水でいっぱいの器をさげさせて、新しい酒と料理を注文し、飲みなおすのです。

赤道直下の熱帯特有の、激しいスコールの洗礼が、その夜のはじまりでした。

【二次会】ペトロナス・ツインタワーを肴に、ジャックダニエルを一本飲み干す

「ミッキーマウスの店」で腹を満たしたあと、僕たちは車で中心街へ移動します。

この国でもアルコール運転は、捕まると高い罰金をとられます。

松本:「Y君。飲酒運転をして大丈夫なの?」

Y君:「この時間、飲酒運転の一斉検挙をしていますが、捕まったら警官に賄賂を渡せばお咎めなしです。この国の警察官は、捕まえると、罰金を払って行政罰を受けるか、それより安い賄賂を渡すかと聞いてくるので、賄賂で済ませます。」

日本では考えられないコンプラ意識ではありますが、しかし、このようなことは、別にこの国だけではありません。新興国では当たり前の話で、行政や警察を動かすには、すべて賄賂がないと動かないのが、経済成長著しい新興国の特徴です。

この日は、捕まることもなく、目的地の高層ビルに到着。その高層ビルの最上階のバーに向かいます。

この最上階のバーは屋上にも店があり、柵がまったくない高層ビルの屋上から、ペトロナス・ツインタワーの夜景を臨めます。日本では、高層建築物の屋上を、柵なしのバーにするなどということは建築行政上考えられないことですが、新興国ではこれは当たり前のこと。

高層ビル屋上の突風に吹かれながら、ペトロナス・ツインタワーの夜景を肴に、Y君が好きなジャックダニエルを、僕たちはストレートであおって空けます。

【三次会】怪しいエリアに迷い込み、ラブホテルと繋がる「カラオケ屋」で言語不明な若い女の子たちに取り囲まれる

さて、二次会も終わりに近づき、僕は明日の予定に備えてそろそろ帰ろうかという気になっているけれども、若いY君はそう簡単に僕を離してくれません。

むしろ、Y君の僕を連れまわす目的は、ここから後の店を奢らせようという魂胆なわけです。

Y君:「松本さん。ここからディープな店をご案内しますよ。」
彼は、こういいながら車を飲酒状態で飛ばします。もはやどこを走っているのか、僕がわからないエリアに車を向けます。

到着したエリアは、明らかに怪しい雰囲気の場所。一般の日本人は、おそらく近寄らないエリアであろうと推測できます。

車を留め、Y君が向かった店は、ラブホテルとカラオケが連結して営業している、所謂、アジアでの遊び人がいう「カラ置屋」です。

カラオケ屋の外見をとりますが、完全に売春をする女の子を置いている店で、管理売春での摘発を避けるため、ラブホテルとは、別の経営体制をとりつつ、実際は、内部でカラオケ屋とラブホテルが繋がっているという営業形態をとっています。

どうやらY君は、そこの常連らしく、慣れた様子で入っていきます。

おそらくY君が、親しい中国系の事業家の人たちと連れ立って使っている店のようで、僕もY君と一緒でなければ、到底一見では入れない店のつくり。僕としても興味津々で、Y君の後ろについて一緒に店に入ります。

猛烈な音量の音楽が店に充満し、僕たちが店に入ったと同時に、女の子に取り囲まれます。

この手の「カラ置屋」は、日本の水商売の店とは全く異なり、女の子は店で勤務していたり、客の隣についているだけでは、一銭のおカネになりません。

多数の女の子を退けて指名をとり、客と売春をしなければ、お金にならないのです。

そのため、女の子たちは必死です。

個室のカラオケルームに入ると、Y君と僕の周りにはそれぞれ3~4人の女の子が取り囲み、自分を連れ出してくれと猛烈にアピールをしてきます。

ところが、まったく言葉が通じません。

僕は、女の子たちに英語で話しかけ、中国語で話しかけ、日本語でも話しかけてみますが、彼女たちの発する言葉がまったくわかりませんし、こちらの言葉が通じません。

僕は、むこうの席で、女の子を選別に入っているY君に、大声で聞きました。

松本:「Y君。この子達、ナニジン? マレー語は通じるの?」

マレー語が片言話せる、Y君は、
Y君:「いや、マレー語も通じません。おそらく、ミャンマーかラオスの奥地から連れてこられているんでしょう。身振り手振りで、交渉してください。

ここは言葉なんて通じなくても、ヤレマスカラ。」

それでも僕は、何とか通じる言葉がないかと思い、いろいろな言語の断片を駆使して、取り囲んでいる女の子に、話しかけてみますが、まったく通じません。

英語も、マレー語も、中国語もできなければ、このマレーシアでは、まったく言語が通じないと思うのですが、この子達はどうやって生きているんだろう?

僕は、そう思いました。

僕を取り囲んだ女の子は、年齢的に一番若い子では、おそらく18歳程度。
一番上の子は、30歳を超えていそうです。

通じた日本語は、“AJINOMOTO”!

いろいろ言葉を試しているうちに、Y君の席で、Y君が大いに盛り上がっています。
どうやらY君の言葉で、通じた単語があったようです。

Y君が、一人の女の子に、“AJINOMOTO!”と言って、盛り上がっています。ある女の子が“AJINOMOTO”という日本語を知っていたようです。

「味の素」は、世界のBOPビジネス(Base of Pyramid)の日本企業最大の成功事例と言われています。

BOPビジネスとは、ピラミッドの最下層(年間所得3000米ドル以下、日本円でおよそ年収40万円以下)をターゲットとするビジネスを言います。この層は、世界で40億人の人口規模がおり、その消費は、一人当たりの単価が極めて低いといえども、人口数が莫大であるため、世界では、有望なビジネス分野と言われています。

味の素は、調味料としての味の素を非常に小さい袋にわけ、単価を大きく下げて、BOPに食い込んだ、日本で最大のBOPビジネス成功企業です。

Y君が盛り上がっている女の子は、日本語も一切知らず、おそらく小学校レベルの初等教育も受けていないと思いますので、日本がどこにあるかも知らないと思いますが、“AJINOMOTO”という単語だけは知っていたようです。

世界で、最も有名な日本語は、“FUJIYAMA”でも、“GEISHA”でもなく、“AJINOMOTO”なんだなあと、僕は、感心したわけです。

Y君は、“AJINOMOTO”ちゃんと、交渉を成立させたらしく、
Y君:「30分くらいで、ちゃちゃっとやってきます! 
ちなみに松本さん、ここの相場は、一発100リンギット(日本円でおよそ3,000円)くらいです。それ以上は、ぼったくられていると思ってください。では、お先に!」
というと、さっさと僕をおいて、隣のラブホテルにその女の子と消えていきました。

酒や、ハラル食の制約ゆえに、性欲が爆発するイスラム圏の夜

取り残された僕は、取り巻いてくる女の子たちが可哀想に想い、Y君が残していった女の子を含め、部屋にいた8名程度の女の子に、それぞれ、50リンギット(日本円で1,500円程度)づつわたし、そのままお酒を飲みながら、Y君の帰還を待ちました。

Y君が戻ってきた後、会計を済ませましたが、Y君が自分で支払ったAJINOMOTOちゃんへの費用は別として、飲み代とチップをあわせ、日本円にして20,000円弱で、なんとも安い店でした。

個室のカラオケルームに入ってしまったため、他のお客様の様子はわかりませんでしたが、おそらくは中華系のお客が多いのではないでしょうか?

マレーシアで話されている言葉もまったく通じない女の子を、外国の奥地から連れてきて、売春をさせるという、国際的にみても犯罪そのものの行為を、堂々と店を構えて行っているところに、新興国の闇の夜の街のディープさを感じたわけです。

最後は、Y君のこれまた完全に飲酒運転の車でホテルまで送ってもらい、その日の夜の活動が、無事終わりました。

マレーシアは、イスラム国家です。
イスラム教は、ハラルによって食事にもタブーがたくさんあり、また、飲酒も禁じられています。

男女は、子供の頃から別に学び、共学の機会がありません。

このような社会は、表面的には禁欲的に見えますが、本質的に欲望か渦巻く社会を作り上げます。

そこに、新興国の強烈な成長を目指して、世界からゴールドラッシュのように、貪欲な事業家が集まり、そこに下敷きになるように、弱者もまた、集められて来ます。

それが、よいか悪いかという問題ではなく、それが新興国の資本主義の姿なのです。

続く

本稿の著者

松本 尚典
URVグローバルグループ 最高経営責任者兼CEO
株式会社URVグローバルミッション 代表取締役
URV Global Mission Singapore PTE.LTD President

松本 尚典

  • 米国公認会計士
  • 総合旅行業務取扱管理者

米国大手金融系コンサルティングファームにて、10年、金融系コンサルタント業務を経験し、帰国後、日本国内の大手企業の役員の歴任。
URVグローバルグループのホールディングス会社 株式会社URVプランニングサポーターズ(松本尚典が100%株主、代表取締役)を2015年に設立。
2018年12月、URV Global Mission Singapore PTE.LTD(本社 シンガポール One Fullerton)に設立。コロナ禍明けの2023年に、日本の中央区京橋に総合商社である株式会社URVグローバルミッションを設立。
現在、東京・シンガポールを拠点として、東南アジアからインドを中心とする南アジア、中東・アフリカにわたる、グローバルサウスへの貿易事業と、日本企業への視察・進出・貿易の支援を行う事業を率いている。
マレーシアには、シンガポールに隣接してマレーシア政府が推進するイスカンダル計画の拠点であるジョホールバルに個人で現地法人を所有し、首都クアラルンプールにて事業を展開するクアラルンプールオフィスを展開。
マレーシアで活動する日系商社に顧問先を持ち、広く日系・中華系・マレー系のマレーシア企業家とコネクションを持つ。

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