特集「ハワイの次に日系人が多いマレーシア」

明治時代に世界に広がった日系人 それをはるかに超える日系人コミュニティ

日本人が、海外にはじめて大きく広がったのは、明治時代の初期。この時代、日本の農村は貧しく、しかも長子相続の封建時代のなごりで、地方農家の次男以下は、親の財産である農地を相続することができませんでした。

このような事情から、地方の農家出身の意欲が高い人たちが目指したのが、新興国であったアメリカでした。彼らは日系移民と呼ばれ、アメリカで一定の規模のコミュニティを形成しました。アメリカが日系移民の排除に、政治的な舵を切ってからは、主に南米が、日系移民が目指す先となりました。

そして、21世紀の今。

南米やアメリカ(ハワイを含む)の日系移民は、既に3世に至り、現地の地域の国民となっています。ハワイは、明治以降も、観光業的にも日本人に人気の高いエリアであるため、日系人が世界で最も多いエリアです。

一方、それに次ぐ日系人が多いのが、マレーシア。首都のクアラルンプールには、世界で、ハワイのホノルルに次ぐ規模の日系人コミュニティが形成されています。

この日系人の多さの理由は、南米や北米とは全く異なります。

マレーシアには、5年間の長期滞在が可能なMM2H(Malaysia My Second Home)ビザ制度があり、これによって、セカンドライフ先として、マレーシアを利用する日本人が、非常に多いためです。

MM2Hビザは、アメリカの長期滞在ビザが、非常に取得に難易度が高いのと比べ、取得の難易度が比較的低いビザです。加えて、一定の条件をクリアして、このビザを取得すると、マレーシアの生活費は、日本に比較して格段に安く、しかも日本では使用するのが極めてコストが高いメイドなども、低コストで利用できます。

年間を通して真夏の気候が続く、赤道直下の国 マレーシアで、低コストで比較的贅沢に暮らせるということで、非常に日本人には人気が高い国です。そのマレーシアを利用する人たちによって、現地の日系人コミュニティが形成されています。

そのため、長期滞在を含めると、今や伝統的に日系人が多いハワイについで、マレーシアは、国全体としてみると、日系人が多くなっています。

したがって、ビジネスでいえば、この日系人を顧客対象としたビジネスが成立しやすく、企業が海外をする場合の第一のステージとして、マレーシアを位置付けることは、とても合理性があります。

ペトロナスツインタワーは、日本と韓国が一棟ずつ建設した

日系人が多いマレーシアですが、しかし、マレーシアは決して日本人が考えているような、
「日本は世界一優れた技術があり、世界から尊敬されている」
と妄信して、日本資本に頼っている甘っちょろい国ではありません。

クアラルンプールの象徴的な建物 ペトロナスツインタワーの建設のエピソードにそれは現れています。

ペトロナスツインタワーは、451.9メートルの88階建てビルが2棟そびえたつ建物です。マレーシアの石油会社ペトロナス社のブランドが付された、まさにマレーシアの国家の威信をかけて建設されたビルでした。

イスラム教のモスクに近似する尖塔が2本そびえるデザインの、ムスリム国家マレーシアらしい高層ビルです。

マレーシアは、この塔型の2棟のタワーを別の国の建設会社に発注し、そのスピードと予算を競争させるという方法で建設をします。タワー1が日本の建設会社ハザマが受注し、タワー2を韓国のサムソンが受注します。

そして、その建設スピードと建設の総合力により、41階と42階に建設される2本を結ぶスカイブリッジの建設を、その優れたほうに任せるという、シビアな方法をとりました。

結果は、日本企業の敗北。

スカイブリッジを韓国に受注を持っていかれてしまい、日本は、その建設スピードの遅さや、建設技術が韓国に負けた結果を世界にさらすことになってしまいました。

日系人が多く、日本人のコミュニティがあるからと言って、マレーシアは、決して日本に甘い国ではありません。

日系人が入りやすくも、最も競争が厳しい、グローバルサウスの都市がクアラルンプールだ

マレーシアは、MM2Hビザなどの政策からわかる通り、積極的な富裕層の長期招致策を行っており、日本人が長期で滞在しやすい国といえます。

そのため、多くのマレーシアビザ業者や、不動産業者が、日本人に向けて長期ステイの営業活動を行っています。

確かに、リタイアをした富裕層の高齢の方が、長期ステイをするには、マレーシアは入りやすい国であるといえましょう。しかし、最近では、その長期ステイの方のマーケットを目的に進出した日系企業も増え、物価も急速にあがってきています。

確かに日本よりも安い商品もありますが、一方、生活インフラはいまだ日本に比べて低く、かつ日本よりも高コストのものもあります。

そして、MM2Hビザなどで入りやすいのは、日系人だけではなく、中華系は、はるかに日系人よりも多く流入してきていますので、ビジネスの競争は、相当に厳しくなっています。

グローバルサウスの中では、日系人マーケットの規模が大きく入りやすくも、ビジネスの競争は意外に厳しいのが、マレーシアのクアラルンプールではないかと思います。

この特集では、そんなグローバルサウスの登竜門にあたる、マレーシアについて情報を発信してまいります。

中華系が多数のシンガポールから、マレー系ムスリムが多数のマレーシアへ国境を超える

中華系が多数のシンガポールから、マレー系ムスリムが多数のマレーシアへ国境を超える
なぜか異なる、東京からチャンギ空港行き航空料金と、クアラルンプール国際空港行き料金
マレーシアは、ユーラシア大陸の南端 マレー半島の大半を占め、その突先でシンガポールという島国に隣接する国家です。
マレーシアは、インドネシアが大半を領有するカリマンタン(ボルネオ)島の北部にも領土を有していますが、その経済機能のほとんどが、首都クアラルンプールを含むマレー半島に集中しており、日系人の多くもマレー半島に住んでいます。
不思議なことに、日本から航空機でこのエリアに向かうと、ほぼ飛行距離が同じはずのシンガポール・チャンギ空港行きの航空料金が、マレーシアのクアラルンプール国際空港行きの航空料金より、はるかに高いのです。
日本国内では、JRの料金というのは、距離や席のクラスなどによって、しっかりと一律に決まっていますが、国際航空や外航船の世界では、サービスや料金が同じ距離でもまったく違います。…
続きを読む

敬虔なイスラム教国マレーシアの首都クアラルンプールの、夜の「男の街」をさまよい歩く

敬虔なイスラム教国マレーシアの首都クアラルンプールの、夜の「男の街」をさまよい歩く
クアラルンプール居住のツワモノY君のエスコートで、夜の街に繰り出す。
僕が、今のURVグローバルグループを創業して独立する前のことから、今回のコラムの話は始まります。僕は、当時ある日本の大手企業グループ資本の、海外進出支援コンサルティング企業を創業し、そこの企業の取締役に就任していました。その僕が取締役を務める企業に、大学を卒業し、新卒で入社してきた、Y君という社員がいました。
この大手企業グループは、新卒を毎年数十名規模でまとめてグループ全体で採用し、グループ所属の企業に配属させる仕組みをとっておりました。そして、その年Y君は、僕が率いる会社に配属されることになり、彼にとって幸か不幸かはわかりませんが、僕が推進する事業の担当として、僕の直轄の部下に配属されました。
大学を卒業し無色に近いY君を、僕は数年間、直轄の部下として鍛え上げました。そして、僕のビジネスのDNAとマインドを移植しました。
その結果Y君は、僕に似た大企業の社員に収まり切れない、ツワモノに成長しました。…
続きを読む

関連する特集

特集 シンガポール

特集 ベトナムに進出する

特集 北アフリカとサブサハラ

特集 台湾を知ろう

特集 アメリカというマーケット

特集 インドという成長エリアへ

特集 ロシアビジネスをあえて今、考える

特集 未来志向で考える韓国ビジネス

特集 香港チャイナ

関連記事

  1. Vol.3 日本よりも深刻な「超・少子化」韓国人の、「産んではいけない」本音に迫る

  2. 独立を勝ちとるまでの多難なベトナム史~中国からの侵略に対する抵抗~

  3. ベトナムのマクロビジネス環境 ~実質GDP成長率7パーセントの高成長エリア~

  4. プロローグ 危機管理大国ベトナム ~新型コロナ禍で、何故、ベトナムは世界最強だったか~

  5. 転職編 第1話「出会い」

  6. 副業飲食起業編 第1話「修行」

  1. Vol.3 日本よりも深刻な「超・少子化」韓国人の、「産んではいけな…

    2024.04.22

  2. 2020年代の今、何故、カンボジアが急成長をはじめたのか?

    2024.03.16

  3. アメリカの巨象 エンターテイメント産業

    2024.02.27

  4. 飲食事業成長軌道編 第4話 イタリア ローマ

    2024.01.26

  5. 第3話 英会話で、本当に英語は上達するのか?

    2024.01.10