「英会話」が、英語ビジネスで、最も「利益が高いビジネス」だということに注意!
英語のスクールといえば、「英会話」。
英会話スク-ルが、英語を取り扱う学校の中で、最も、派手に宣伝を行っているのは、日本の英語教育熱が高まった20世紀後半から変わりません。現在では、リアルの英会話スクールが衰退し、オンラインスクールにとって代わられつつあります。そして、リアルな対面スクールとの間に、激しい広告合戦が繰り広げられています。
このような宣伝広告を目にすると、
「英語ができるようになるためには、英会話スクールに行かなければならないのでは?」
と、思いますよね。
英会話は、英語習得の「一定段階」におけるスピーキングのアウトプットトレーニングとしては、有効だと僕も思っています。
ただし、派手な英会話スクールの宣伝に乗って、「一定段階」に至っていないのに、英会話スクールに通っても、費用対効果があがらない無駄なお金を費やすだけです。
英会話スクールという業態は、英語ビジネスの中で、最も参入障壁が低く、かつ、売上があげやすく、利益があがる「美味しい」ビジネスモデルです。
学校ビジネスの経営資源
学校ビジネスの経営資源は、「カリキュラム・教材・講師」の3つです。
受験産業である予備校業などでは、このうち、教材(テキストや模擬試験)の開発に最も資本が必要となります。予備校業のブランドである、四谷大塚やSAPIX、駿台予備校・河合塾などは、このテキストや模擬試験などの教材に、長年、投資を続け、優れたコンテンツを保有するゆえに、強いブランドの予備校となったのです。
そして、この教材をベースに、合理的なカリキュラムが組まれ、最後に、それを教育できるプロの講師を獲得するのが、予備校業の経営資源の開発です。
一方、英会話スクールに通うとわかりますが、どこでも、この教材がチープで、カリキュラムも工夫されていません。単に、受講生のモチベーションをあげられる白人を中心とした講師(最近は、アジア人講師で価格競争を行うスクールもあります)を、個別にあてがっているだけです。
英会話は、「質より量」と説得できる
これで通用するロジックは、英会話を「質より量」だと受講生を納得させて、まとまった受講料を前払いさせることができるビジネスモデルにあります。
予備校業などの教育産業は、「質」が重要ですが、英会話スクールだけは、「質より量」と受講生に思わせて、受講料を払わせることができる業態です。
それゆえ、英会話ができるようになりたいという願望を持つ受講生を広告で集めることができれば、チープな教材とカリキュラムで、大きな売上高と、高い利益率をあげることができます。
こうして、英会話が、英語の習得の近道だと思い込まされた受講生が、極めてコスパの悪いスクールに、おカネを費やすことになります。
ネイテュブの言語習得と、ノンネイティブの言語習得は、その過程がまったく違う
一方、英会話の効用というのは、言語の習得に関して、説得力があります。ネイティブは、日常に会話の中で、膨大な量の英語を話し、それによって、言語を習得しているからです。
「質よりも量」で英語を話せば、ネイティブのように、誰でも英語ができるようになる、だから、英会話の「量」をこなすための、莫大な時間数の英会話レッスンを買いましょう、という提案が、英会話学校の営業の常套句です。
質の高くない外国人を講師に設定して、時間単価を安くし、そのかわりに量を一括前払いで買わせることで、売り上げをあげてゆくのが、英会話スクールビジネスです。
しかし、この一見、説得力がある提案に従っても、実際は、英語力はたいしてあがりません。せいぜい、海外旅行者が使う程度の低レベルの会話ができるようになるのが関の山です。
ノンネイティブは、ネイティブと言語の習得のメカニズムが違うのです。少なくとも、読み・書き・聞く・話すという4技能を、ネイティブが行うように駆使して仕事や留学ができるようになるには、ノンネイティブは、ネイティブとは別の方法を採用して、習得をする必要があるのです。
英会話で、チカラがあがる条件
この習得のためのメカニズムの大半の時間を投下するのが、勉強ではなく、「トレーニング」です。
文法と単短熟語の習得など学校英語(勉強)をベースにして、音読に基づく読解とリスニングのトレーニングを積み、シャドーイングを中心としたヒアリングトレーニングを積み、瞬間英作文の方法による大量な構文の使用のトレーニングを積むこと。これこそが、ノンネイティブのトレーニングです。このトレーニングを、おおよそ、2000時間程度積むことにより、英語運用の基礎力が出来上がってきます。
この基礎力の上に、知的レベルの高いネイティブとの対話を積み上げ、そこで使われる単熟語や構文の使い方を習得してゆくと、総計4000時間を超えたあたりから、ネイティブと苦労することなく話ができる英語力が出来上がってくるのです。
英会話というのは、「聞く」「話す」技能のアウトプットです。アウトプットを行わなければ、最終的には、話すことはできません。
したがって、英会話の場合、その前提として、「聞く」ことのトレーニングと、「話す」コンテンツのインプットが不可欠になります。相手の言っていることが聞き取れなければ、会話は成立せず、自分が言いたいことをコンポジションすることができなければ、発信は、単なる単語の羅列に陥ります。
「聞く」トレーニングは、英語を流し聞きしてみても、それは効率が悪すぎます。耳の前に、文字になった文の、文法構造を理解しながら、的確に意味を掴む読解のトレーニングを大量に積み、かつ、その文を音読して耳から入っても、そのまま文意を把握できるトレーニングが、「聞く」トレーニングです。これを、大量に積むことで、相手の話が、そのまま日本語と同じように、文意をとらえられまでになります。
したがって、英会話というアウトプットの前提として、以上のような「読む」→「聞く」というトレーニングと、瞬間的に文章をコンポジションする「作文」トレーニングが積まれていることが必要となります。
大体、体感では、このトレーニングを2000時間程度積むと、その次の段階では、英会話の実践トレーニング段階に至り、そこから、累計4000時間程度で、知的水準が高いネイテュブと無理なく会話ができるようになる水準に達する、というのが、僕自身の過去の経験値です。
ノンネイテュブが基礎から実力をアップするアウトプットは、「書く」→「話す」
英会話を売る企業や学校の営業の常套句は、ネイティブの子供が、言葉を話す過程から、語学の取得に、「まず話す」ことを提案します。
しかし、ここには、大きなビジネスのマジックが潜んでいます。
ネイテュブの子供たちは、幼少期の知識を吸収するアタマの状態で、一日中、母国語に接し、それに10年以上かけて、言語を習得しています。少なくとも、中学生や高校生の言語レベルに達するまでに、10年以上、一日中、母国語に接する環境下にあるのです。
しかし、ノンネイティブが、第二外国語以降の習得のために割ける時間は、僕の感覚では、どんなに多くても、4000時間程度です。仮に、1日3時間を毎日、第二外国語の習得にかけたとしても、約4年間程度で、第二外国語をマスターすることが求められると思います。
このような短時間で外国語をマスターすることを要するノンネイティブが、幼児期の子供が行うような方法でやったのでは、とても効率が悪すぎます。
更に、英会話学校に、幼児期の子供が母国語に接するほどの時間を投資するのでは、その金額たるや、大変な金額になってしまいます。
ノンネイティンブは、ネイティブが母国語に接する時間よりも、格段に少ない時間で、第二外国語以下の言語を習得しなければならないのです。
そうなると、言語表現の方法を、話す中で習得するのは、時間のロスが大きすぎます。したがって、書くという方法の中でで、表現方法を構文として習得し、それを話し言葉の中で、使ってみる、という訓練をすることが、求められます。
ノンネイティブは、「書く」→「話す」という順序で表現をスピーディに習得するのが効率的です。
聴く訓練にしても、聞き流すような方法では、これも効率が悪すぎます。そこで、「聞く」→「読む」→「話す」→「聞く」というような、循環的な訓練を積む必要があります。
まず聞き、それを文字で文法と語彙を確認しながら読んで理解し、音読を繰り返して発音し、そして、再び聞く、というトレーニングです。
このようなトレーニングを、僕の感覚でいうと、2000時間程度積み上げた後で、かなり知的なレベルの高いネイティブと、会話のトレーニングを積むという形が、最も効率的な習得方法だと思います。
英会話は、誰でも英語力があがるわけではない 「話す相手を選ぶ」「量より質」を重視することの重要性
英語のスピーキング力というのは、単なる、言葉の「発信力」ではありません。
よく、中国人の方で、猛烈なスピードで英語を発信している方を見かけます。しかし、中には、英文法が中国語文法的な間違いを犯して、支離滅裂だったり、発音が中国語発音的で非常にネイティブが聴くと不愉快だったりするヒトもいます。
このようなヒトは、決して、ネイティブから見て、高い評価をえられません。通訳をつけて話したほうが、相手の印象はよいし、誤った伝わり方をしないと思います。
重要なことは、スピードが速くなくても、文法的に正しく、かつ発音も英語的に話すことです。そして、何よりも、知的水準の高いコンテンツの話しをすることが重要です。
特に仕事で英語を使う場合、その内容で、人格や信用性をみられてしまうのは、日本語でも英語でも共通だと思います。
その意味で、英語を文法的に誤りなく、かつ、英語らしい表現と発音ができるようになるまでトレーニングをしたら、英語の教材を、TOEICのような一般職が使うビジネス英語の教材ではなく、英検準1級や1級レベルの知的水準が大学のリベラルアーツ教育レベルの教材に切り替え、これを教材としながら、教育水準の高いネイティブを相手にして、ディベートや、意見交換の会話を行う、というようなトレーンングに切り替えることが、よいでしょう。
この段階の英会話であれば、短時間のトレーニングでも、非常に高い効果がえられると思います。
英会話は、「質よりも量」というのは、明らかに、質の高くないネイティブのバイト講師を安く使い、大量なコマ数をまとめて購入させる、英会話産業の営業トークです。
一定レベルまで、トレーニングで英語力を高めたうえで、実践力に高めるための英会話は、質が重要であって、量ではありません。
これが、英会話を英語学習に導入する重要なポイントだと僕は思っています。
本稿の著者
URV Global Mission Singapore PTE.LTD President
松本 尚典
- 通訳案内士
- 米国公認会計士
- 総合旅行業務取扱管理者
大学卒業後、金融系大手シンクタンクで経営コンサルタント職を経験。その後、英検1級をクリアーして、「英語の司法試験」と言われる通訳案内士を英語で取得し、社費留学でハーバードビジネススクール(経営学大学院)に留学し、世界でもっとも権威のあるハーバード大学MBA(経営学修士号)の学位を授与され、米国公認会計士として、ニューヨークの会計系経営コンサルティングファームで金融系コンサルタント業務を経験。
日本国内の大手企業の役員の歴任を経て、URVグローバルグループのホールディングス会社 株式会社URVプランニングサポーターズ(松本尚典が100%株主、代表取締役)を2015年に設立。
同社の100%子会社として、日本企業の海外進出支援事業・海外渡航総合サービス事業・総合商社事業・海外の飲食六次化事業を担う、URV Global Mission Singapore PTE.LTD(本社 シンガポール One Fullerton)を2018年12月に設立。現在、シンガポールを東南アジアの拠点として、日本企業の視察・進出・貿易の支援を行う事業を率いている。