2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、2014年から始まっていた!
2022年2月21日 モスクワ時間 午前10時35分。ロシアのプーチン大統領は、「ウクライナ東部のドネツク人民共和国と、ルガンスク人民共和国の分離独立を承認する」という発表を行いました。
これが、2022年に勃発したロシアのウクライナ侵攻の始まりでした。
2月24日 モスクワ時間午前6時。プーチン大統領は、ウクライナ東部で「特別軍事作戦」を開始すると発表。これをうけ、欧州連合航空安全機関は、ウクライナ全域を紛争地帯と見做すと決定。
欧米や日本のメディアは、ロシアがウクライナに、電撃的に軍事侵攻をはじめ、圧倒的な軍事力の優位によって、「弱い」ウクライナを「侵略している」という、発信を国民に行いはじめました。
特に、日本のメディアは、日本人が、ウクライナやロシアに関する知識がまったくない中で、緊張が高まっている米中関係、及び中台関係に、ロシア問題を重ねあわせてしまい、ロシアの侵攻が成功すれば、調子に乗った中国が、台湾にすぐにでも軍事侵攻をはじめるのではないかということを、国民に連想をさせるような報道を行いました。
また、ウクライアの指導者である、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が、ちょっとイケメンだったため、ロシアのプ-チン大統領の冷徹なルックスと比較し、日本人は、単純に「ウクライナびいき」に陥ってしまいました。
日本人特有のすべての問題を、「良いもの」と「悪もの」にわけて考えてしまう、時代劇的な思考パターンから、「ウクライナは弱くて良いもの、ロシアと中国は悪もの」という構図が、日本人の頭の中に出来上がってしまい、その後は「悪いロシアが早く負けろ!」と言わんばかりの、応援的な報道が繰り替えされました。
しかし、ウクライナと、ロシアの問題というのは、日本人が考えるほど、単純ではありません。
一方、ウクライナを支援しているように見えているアメリカや、NATO北大西洋条約機構も、この問題が、非常に解決困難なことを、よく知っていました。従って、アメリカも、NATOもロシアへの経済制裁をかけて、ウクライナに武器提供を行いつつも、それは、ロシアのプーチン大統領に、今のウクライナ侵攻を、一旦、引かせるための措置という介入に留め、全面的に介入をすることを、避けてきました。
国際社会の誰も、「悪者 プーチン」を失脚させよとは、言っていないのです。欧米社会は、どこまで介入するか計算しながら、動いているのです。従って、日本が、日本人特有の「判官びいき」発想で、ロシアをいたずらに批判することは、非常に危険であり、その危険性を充分認識しなければ、やってはならない言動だと、僕は思っています。
ウクライナと、ロシアの問題の難しさは、このロシアの軍事侵攻が、今、はじまったものではないという点に現れています。
短期的にみても、2022年のロシアの侵攻は、コロナ禍のはるか前。2014年に行われた、ロシア・ウクライナ戦争の、延長線の中に位置づけられる問題なのです。
つまり、1年や2年で片付く問題ではありません。
そんな問題を、国民感情論に押されての対ロ政策をとることは、世界最大の資源大国を敵に回し、北方領土問題という半世紀以上にわたって、政治家が努力を重ねてきた問題を、振り出しに戻してしまうことを、熟慮した戦略的行動だとは、とても思えません。それどころか、ロシア、そしてプーチン大統領の危険性を顧みない暴挙といっても過言ではありません。
案の定、感情論だけで、戦略なしに動いた日本には、深刻な資源問題と、強烈なインフレ問題という、痛いしっぺ返しが来ることになったのです。それも、この問題が、半年や一年程度で解決がつかない可能性が高い、深刻な経済的な事態を、日本経済に齎すことまで考えて、日本は、外交的な態度を決めたとは、とても僕には思えないのです。
このコラムでは、日本人が知らない、ウクライナとロシアの「難しい関係」、更に、ロシア人からみたウクライナ問題の位置づけ、そしてロシア人とはどのような思考方法をとる人たちなのか、ということをみながら、日本人がもっと、ロシアという国やロシア人というヒトを知るための情報を提供し、ロシアと日本が、どのような関係に立つべきなのかを、考察してみたいと思います。
帝政ロシアと、現在のロシア
今、僕らの日本の北方に広がる「ロシア」は、ロシア連邦という国民国家を指します。
このロシアという言葉には、これとは似て非なる国家を指して使うことを、日本人は、ほとんど意識していません。
それは、ロシア帝国です。ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)によって、革命で倒された帝国です。
現在のロシア連邦という国民国家と、ソ連成立前のロシア帝国は、同じロシアという言葉を使っていますが、それは、別物の国です。
この両者の使い分けの問題が、ウクライナとロシアの問題の根幹にあるのです。
ロシア帝国は、現在のロシアに加え、フィンランド・リトアニア・ベラルーシ・ウクライナ・ポーランド・中央アジアなど、ユーラシア大陸の北部を広く支配した帝国でした。
今のロシア連邦よりも、はるかに大きな大国だったのです。
ウォッカがなければ、今のロシアは存在しない国だった!?
そして、ロシア帝国の始まりである、キエフ大公国は、現在のウクライナにありました。
つまり、ウクライナこそ、ロシア帝国の中核なのです。
つまり、ウクライナとロシア連邦の争いは、ロシア帝国の本家を自覚するウクライナと、現在のロシア連邦という国民国家の対立です。
古代に世界最大の帝国となった、古代ローマ帝国。そのチカラが弱まり、東西に分裂したのちに、東ローマ帝国(ビザンチン帝国)が、西ローマ帝国のカトリックとは別の正教を、国の国教と定めました。
この正教をギリシャ正教と呼びます。一方、この正教を、ロシア帝国のウラジミール大公が、受け入れる決断をして、ロシア正教が生まれたわけです。それによって、ここに、はじめて、「ロシア」が成立したのです。
ウラジミール大公は、正教ではなく、イスラム教を受け入れて、オスマン帝国的な帝国になった可能性があったのですが、もしそうなっていれば、今のロシアは存在しませんでした。
ウラジミール大公は、イスラム教か、正教かを選択するにあたり、自らも愛し、国民にとっても寒冷地故に手放せないウォッカを、イスラム教では飲むことを禁じている故に、イスラム教を蹴った、という歴史学者の説があります。つまり、イスラムの帝国か、ロシア帝国かを選択した時に、酒が飲めないイスラムを蹴って、ロシアになったという説です。
そうだとすると、もし、ロシア地域にウォッカがなければ、ロシア連邦は存在せず、共産主義革命も、ウクライナ戦争も起きていなかったともいえるかもしれません。
このような意思決定は、今のウクライナを中心になされたものです。まさに、ウクライナこそ、ロシアの源流なのであり、ロシアの本家なのです。
このような歴史の経緯から、ウクライナ人は、自分たちこそ、ロシア帝国の正当な継承者であると、今でも強く考えているのです。
日本に例えていうなら、今のロシア連邦は、新しいロシアという意味での東京で、ウクライナが、京都や奈良にあたると理解すれば、わかりやすいのです。
京都や奈良の人たちが、「自分たちこそ、日本の正当な継承者である」という誇りもっているのと、ウクライナ人がもっている誇りは、よく似ているのです。
だから、ウクライナ人は、「今のロシア連邦が大嫌い」なのです。
お前らなんか、新参ものだろうという感覚で、京都生まれの人が、心の中で東京を快く思っていないのと似ています。
「そもそも、今のロシア連邦は、ロシア帝国の正当な承継者でもなんでもない」
このように、ロシアを見下すウクライナでは、ロシア人(スラブ民族のロシア人で、今は、親ロシア派と呼ばれる人たち)は、ウクライナ人から非常に見下されて生きてきたのです。
現在のプ-チン大統領率いるロシア連邦が、ウクライナ侵攻を正当化する「解放」という言葉は、ウクライナに住む、ロシア人の同胞を、「あのロシア人を見下す偉そうな態度のウクライナから救う」という意味なのです。
軍事大国 ウクライナ
一方、今のウクライナについても考えてみましょう。
日本で報道されているメディアの論調をみると、どうも日本では、強国のロシアが、弱小国のウクライナを一方的に攻めているというように、捉えられているように、僕には感じてなりません。
まず、認識をしなければならないことは、歴史的にみて、ウクライナは軍事的な弱小国では、まったくありません。それどころか、旧ソ連時代、ウクライナは、ソ連の最重要な海軍拠点であった黒海艦隊を担う、アメリカと並ぶ、精鋭ソ連軍の最大の軍事拠点を担っておりました。
つまり、NATO北大西洋条約機構軍と対峙した、ワルシャワ条約機構軍の最重要エリアでした。勿論、ソ連の核兵器も、そこには大量に保有していた国です。
ウクライナは、ソ連から独立した後、欧米の主導によって、その核兵器を放棄したという歴史があり、欧州やアメリカは、その事実からウクライナに対して、軍事的な協力と支援を行っているのです。
本来、ロシア連邦と、ウクライナの紛争は、ロシア帝国内部・旧ソ連内部という、欧米にとっては、過去の敵の内部紛争に過ぎません。
その中で、欧米がウクライナに軍事協力をするのは、ソ連崩壊後に、ウクライナの核兵器を放棄させて、ロシア連邦に対して、核の傘を失わせたウクライナに対する、責任を果たしているのです。
ウクライナが、ロシアに、あっけなく占領されてしまえば、欧米の主導に従って、核兵器を手放した国家が、再び防衛のために、核武装を始める可能性があるため、欧米としては、ウクライナに協力し、ウクライナの軍事力を補っているのです。
ウクライナは、欧米の軍事力の支援さえあれば、ロシアと対等に戦闘を進められるほどの、強国なのです。
日本人はその認識がないため、「ウクライナ、頑張っている!」的な声援を送っていますが、ウクライナ自体が、ロシア連邦に勝るとも劣らない軍事大国なのです。
ロシアのプーチン大統領も、それを承知で侵攻したはずです。
よって、日本で報道されているように、ロシアの誤算・プーチンの誤算で、案外ウクライナが頑張っているね、的な話ではありません。
強国同志、絶対に譲歩できない、プライドをかけた戦争なのです。
もし、プーチン大統領に誤算があったとすれば、それは、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が、これほど、世界を味方につける発信力に長け、世界がこぞって、ゼレンスキー大統領を支援したという点ではないでしょうか。
いずれにしても、ロシアのウクライナ侵攻は、そう簡単に終わるはずがないのです。両方ともに、強国同志の、大きな戦争なのです。
ウクライナが抱える問題
ウクライナの西部は、ロシア連邦と異なり、スラブ人の国ではありません。ウクライナの西側は、ヨーロッパ民族に近い意識を保有するエリアです。
一方、東側は、スラブ民族が多数のロシア寄りのエリアです。
ソ連が崩壊した時、このようなウクライナが、ロシアと離れて、独立国家になりました。この東西問題が、ウクライナ最大の問題です。
一方、ウクライナには、ソフィア大聖堂という正教会の重要な教会があります。
そして、ロシア連邦にとって、ソ連時代に大きな力の源泉であった黒海への重要な出口でもあります。ロシアの軍事的な重要な拠点であり、ロシア人が多いウクライナ東部は、決して譲歩することができないエリアなのです。
ウクライナ東部には、ロシアに親近感を抱くロシア系住民が多く、日本で報道されているように、すべてのウクライナ人が、ロシアを憎んでいるわけではありません。
ここが、とても難しいところなのです。
強いトップしか認めない、ロシア人
ロシア連邦という国は、東欧で、とても嫌われ者の国です。
ウクライナの西側の住民は、非常にロシアが大嫌いです。
URVグローバルグループが、ヨーロッパの拠点に据えている、エストニアでも、ロシアは非常に嫌われています。
おそらく、東欧で、親ロシアの国は、白ロシアと歴史的に呼ばれていた、ベラルーシだけではないかと思います。
では、何故、ロシア連邦は、ここまで東欧の嫌われ者になったのでしょうか?
僕は、それは、ロシア人の性格と、その考え方によっているのはないかと思っています。
2000年代の初めころ、僕が、アメリカのウォール街で、金融系大手コンサルティング会社に属して仕事をしていた時のことです。
ロシアのある企業にクライアントができて、僕は、モスクワに行くことになりました。
その時、最初に、共同監査パートナーを組んでいたモスクワの公認会計士から、受けた助言があります。
相手が弱腰であるとみたり、少しでも譲歩を示す態度をみてとると、徹底的に、相手に反撃を加えてくると思ってほしい。
だから、英語を使う時、仮定法や、譲歩の表現は、絶対に使用しないほうがよい。」
ロシア企業での監査の業務の思い出
そして、実際、あるロシア企業と、その経営陣と仕事に入ってみて、このパートナーの公認会計士の先生が言われることが、よくわかりました。
ロシアの企業は、どこも経営陣と従業員との間には、「超」がつくほど、強権的なマネジメントの関係が成り立っていました。
そして、会計監査に入った僕たちの中でも、ロシア人に対して、融和的・友好的な態度をみせたスタッフは、その後、ロシア側から舐められて、仕事が進まなくなりました。
僕は、仕事上、断定的な英語の表現を多用し、英語を話すスピードをCNNのニュースキャスターの話す英語並みにアップし、先方からの質問には、容赦なく専門用語を多用して、即答をしていきました。
ロシア人は、こちら側の強さと、アタマの抜群のよさを、徹底的に相手に示さなければ、相手はこちらを尊重してこないと、気づいたのです。
しかし、ロシア企業の経営者が、僕に対して、強く敬意を表する態度を見せるようになったのは、そのような仕事の進め方だけではありませんでした。
モスクワに数日滞在した後、僕たち、会計監査チームは、先方のロシア企業の社長から、夜のご招待にあずかりました。
その席でのことです。
ロシア料理が運ばれてくる中、ロシアにつきもののウォッカが、瓶で何本も運ばれてきました。
ロシア特有の、ウォッカの「一気飲み」です。
アメリカから入った監査チームのメンバーは、誰一人、怖がってウォッカを一気飲みしません。
トルストイの「戦争と平和」の中で、ロシア人たちが、ビル上階の窓に立って、ウォッカを瓶ごと一気飲みするシーンが出てきます。ロシア人は、ウォッカを瓶ごと一気飲みできない漢に、臆病者と、罵声をあびせるのです。
ロシア人にとって、ウォッカに強いことは、強い男の象徴でもあります。
よっし!
やってやろうじゃねえか!
と、ばかりに、僕は、その強いウォッカの瓶を受けとり、一気のこれを飲み干しました(今の年齢の僕がやったら、死んじゃうのではないかと思います)。
当時の僕は、酒が天下無敵に強かったのです。
そして、翌日、普通の様子で、その会社に行き、監査の仕事をはじめた僕は、ご招待をしてくださった社長から、ロシア訛りの英語で、こう言われました。
「ミスター松本は、ブルーウルフの血を受けついだ、タタールだ。
是非、今度は、あなたと二人だけで、呑みに行こう。」 と。
そして、ここから、この社長と僕は、非常に親密な関係を作りました。その後、僕は、この会社の監査役に就任し、今でも、その関係が続いています。
タタールというのは、タタール族のこと。
タタール族は、ロシアの中央部に住む、所謂、モンゴル系の血を引く民族です。
ロシアと言えば、日本人は、スラブ民族の国と思うかもしれませんが、広大なロシアには、実に、様々な民族が暮らしています。
ロシアは、非常に広大な領土を有し、その殆どは、シベリアの凍土と、深い森に覆われています。現在でも、世界地図のロシアをみるとわかりますが、ロシアは、周囲を実にたくさんの国によって囲われています。
日本のように、海に囲われている島国で、比較的、単一な大和民族で構成されていた国の歴史からは、ロシアのようなユーラシアの陸続きの国境に囲まれた国の実情は、想像しにくいわけです。
ロシアの歴史は、まさに、侵略を受け続けてきた歴史でした。その最大規模の侵略は、モンゴル帝国によるチンギス・ハーンによる侵略でした。
異民族・異教徒による侵略は、単一民族の中の戦国と比較して、非常に残酷な事態を引き起こします。
戦争に勝ち、支配を確立した異民族は、侵略地域の土着の民族の男子を奴隷化して、労働力と最前線の戦力に用いて殲滅させ、女子を性奴隷化し、これによって民族が混血します。被支配民族は、このような民族浄化の対象となって、混血の中で、別の民族に代わっていきます。
南にあるモンゴル帝国を統一したチンギス・ハーンは、ユーラシア全土に侵略を続けました。ロシアの中部には、こうして、モンゴル族の血が入り込み、今、タタール人と言われる民族が誕生したのです。
シベリア鉄道で、ロシアを旅するとわかりますが、(詳しくは、「1989年冬。中央大学3年生だった僕が、崩壊するソ連を、一人で旅して考えたこと」を参照してください)、シベリア鉄道に乗ってくる人たちの顔は実に多彩で、中央部に行くと、僕たち日本人や中国人と見分けがつかない人たちで、シベリア鉄道は、いっぱいになります。
彼らが、タタール人です。
チンギス・ハーンは、モンゴル族の首領ですが、モングル族という民族は、自らを「蒼き狼の末裔」と考える、非常に攻撃的な民族でした。
先の社長が、僕を「ブルーウルフ(蒼き狼)の血を受けついだ、タタール」と言ったのは、僕の顔がタタール人に似ているため、「お前は、人類史上最強の男 チンギス・ハーンの血を受けた男」だと、賛辞したわけです。
この言葉は、ロシア人にとって、相手を強い男と認める最大級の敬意をあらわす言葉なのだと、僕は、後に知りました。
この社長の言葉に、ロシア人の性格が、よく現れています。
ロシア人にとって、モンゴルは、侵略者であり、チンギス・ハーンはそのトップです。
中国人や韓国人にとって、大日本帝国のトップだった日本の天皇は、いまだに、遺恨の的になっているのと比べ、ロシア人は、自らを侵略したモンゴルを、畏敬の念で把握し、敬意を払うのです。
これが、ロシア人の特徴です。
例えば、アメリカでは、トランプ大統領発足の際、ロシアがトランプ氏を勝たせるための選挙への介入をしたことが、大きな問題になったのを、覚えていると思います。
ロシア人は、トレンプ氏が、親ロシア的であったために、トランプを支持したわけではありません。ライバルであり、敵である、アメリカの大統領に対しても、オバマさんよりも、極めて強い政治家であるトランプさんのほうが、「好敵手」だったために、トランプさんに、肩入れをしたのです。
ロシア人は、長い歴史の中で、その大陸的な地理故に、指導者に絶対的な強さを求めます。日本のように、妥協をする政治家や、協調を重んじる政治家に人気が高まるということと、真逆の性格を持っている国民性なのです。
ロシアのウクライナ侵攻の、日本における報道をみると、ロシアや、そのトップのプーチン大統領を、「日本的な観点」からしか、みていない報道が目立ちます。
ロシアに戦況や経済制裁が不利だから、ロシアは負ける、といった論調が多いのですが、そのメディアの報道にもかかわらず、まったくロシアが引こうとせず、戦況は長期化しています。
それは、ロシア人、そして典型的なロシア人であるプーチン大統領は、不利な戦況だからと言って、簡単に敗北をするようなそんな人物ではない、ということによります。
欧米の情報機関は、そのロシアと、プーチン大統領の性格を分析し、熟知しているので、ロシアのウクライナ侵攻に、経済制裁や、ウクライナへの武器支援をしても、全面対決を避けているのです、
ロシアは、ウクライナから一時的に軍事撤退することはあっても、ウクライナ攻略を絶対に諦めないでしょう。仕掛けた戦争は、絶対に敗北をしない、というのが、ロシアという国・ロシア人という国民・そしてプーチンというヒトだからです。
ロシア人は、自国を侵略したモンゴルのチンギス・ハーンや、アメリカのトランプ大統領のような敵でさえ、「強いものが正しい」と考えます。
まして、自国の主導者である大統領が、妥協して引けば、その人間は、永久にロシアの主導者としての資格を失うわけです。
それが、ロシア人だと思ったほうがよいでしょう。
ウクライナ侵攻は、核戦争まで進む可能性が極めて高い
一方、ウクライナも軍事大国で、欧米をはじめ、世界がこれを支援する体制を作って、徹底的に抗戦しています。
従って、ウクライナ侵攻は、ロシアによる核兵器の使用の危険性が、最も高い状態に向かって進んでいると思います。
ソ連の核を放棄したウクライナを、欧米は、さすがに核の傘では守りません。それをすれば、世界は全面核戦争に落ちてしまうことを、欧米は、よくわかっているからです。
そうなると、ロシアがウクライナに対し、最終的かつ一方的に核戦争を仕掛けるところまで、情勢は行く可能性が高いと、僕は思います。
広島・長崎についで、人類の第三番目の核の使用にロシアが踏み切る可能性が極めて高いのです。
ロシアに対する、日本の関わる姿勢
日本人は、日本人特有のセンチメンタリズムと、判官びいき意識で、ウクライナ支援を、深い考えもせずに抱いています。
しかし、それは、一歩道を誤ると、北方領土問題を抱える日本が、全面的に、「敵に回したら、絶対に負けを認めない」ロシア人を、敵に回すことを意味しています。
ロシアとウクライナの問題は、ロシア帝国時代からもつれた複雑な民族の意識がからむ問題であり、かつ、旧ソ連の中でのもめ事です。
日本のような専守防衛を国是に掲げる平和国家が、安易に関わる問題ではないのです。欧米に左右されず、中立を保つべき問題だと僕は思っています。欧米は、ウクライナに核を放棄させた責任がありますが、日本はそこに関わっていないのです。
よって、日本は、欧米と必ずしも同じ立場にはいません。
一時のセンチメンタリズムで、ロシアと対立すれば、莫大な資源と、北方領土問題を抱えるロシアに、既に北方領土という国土の一部を侵略されている日本が、長期的に、敵対する羽目になることを、よくよく考えるべきだと、僕は思っています。
僕は、事業家であり、投資家です。軍人でも、政治家でもありません。
そんな僕が歩む道は、ロシアに対しても、ウクライナに対しても、民間事業ベースで、共存するビジネスを作り出すことだと思っています。
とりわけ、ロシアとの関係では、今後も、僕を「ブルーウルフ(蒼き狼)の血を受けついだ、タタール」と認めてくれた経営者をはじめとするロシア人人脈を大切にしながら、新たなビジネスにタイミングをみて、踏み込んでいきたいと思っています。
政治が紡げない国際関係を創り上げることも、事業家の役割だと、僕は思っています。
続く
本稿の著者
松本 尚典
- 米国公認会計士
- 総合旅行業務取扱管理者
1990年、中央大学法学部法律学科卒業。
日本のバブル期に大学生時代を過ごす。大学に通いながら、当時台頭していた、大手量販店小売企業の創業社長の特命スタッフに、大学1年生時にスカウトされる。そして、新規事業開発・新店開業、そして企業買収などのハードな仕事を経験し、経営の道に進むことを決意する。
新卒で、大手銀行への就職内定が決まった後の大学3年生の11月に、ベルリンの壁が崩壊。ワルシャワ条約機構軍によって閉じられていたソ連や東欧の「鉄のカーテン」が崩壊すると、大学時代に働いて貯めた資金をすべて持って、崩壊するソ連への渡航を、一人で実行する。そして、極東のウラジオストックからモスクワへ、シベリア鉄道で、単身旅をし、更に、東欧を旅して、ルーマニアにまで入国した経験を持つ。
1990年、新卒で、日本の大手銀行に入行。銀行からシンクタンクに配属され、金融系経営コンサルタントとして仕事を開始。その後、銀行より、アメリカ ハーバードビジネスクール(経営大学院)に社費留学。
ハーバードビジネスクールでMBAを取得後、日本の銀行の退行を決意。米国ウォール街にて、国際的な金融系コンサルティングファームと契約。ロシア企業への経営支援業務も多数経験する。
2007年より日本に基盤を移し、日本国内の大手企業の役員の歴任をえて、URVグローバルグループのホールディングス会社 株式会社URVプランニングサポーターズ(松本尚典が100%株主、代表取締役)を2015年に設立。現在、世界に広がるURVグローバルグループの各社を持つ、グループCEOとして活動中。