ベーカリー業界の専門新聞「パンニュース」2019年1月1日号に、株式会社ダイユーが主催する、ベーカリー経営者団体NexStarsの第3回講演会(2018年11月13日)で、「辻説法かわら版」を運営する、株式会社URVプランニングサポーターズの代表取締役社長 兼 エグゼクティブコンサルタントの松本 尚典が講演をした内容が掲載されました。
▶パンニュース社
http://www.pannews.co.jp
▶株式会社ダイユー:老舗ベーカリーコンサル会社が出した、女性役員陣への事業承継の結論
https://tsuziseppou.urv-group.com/doc-008/
▶「あなたの店の名前はブランドに育っていますか?」~ベーカリーのブランドを地域で育成・発信する手法~
https://tsuziseppou.urv-group.com/seminar-001/
ダイユー主催 第3回ネクスターズより
ベーカリーのブランド戦略
既報のとおりダイユー主催の第3回ネクスターズで、同社顧問、(株)URVプランニングサポーターズ代表取締役の松本尚典氏が「あなたの店の名前は、ブランドに育っていますか?~ベーカリーのブランドを地域で育成・発信する手法~」をテーマに講演した。講演内容を要約掲載する。
先にブランディングを
今日のテーマがベーカリーのブランド戦略と聞いて、ピーンときた人は鋭いと思う。マーケティングの基本は・製品・価格・販促・どんなところへ売り込むか――の4つをどう組み合わせるかだが、このうち製品戦略の対極に位置するのがブランド戦略だ。
皆さんはこれまで、製品をどう開発して作るかに入れてきたと思うが、最近はメディアをうまく使ったブランド戦略に乗り出す会社(店)が増えている。
ベーカリーの経営者はしばしば「美味しいものさえ作ればいい」というが、それだけでは駄目で、会社(店)がブランディングされると、たとえその商品の値段が高くても顧客を引き留めてしまう強い力になる。
製品戦略の場合、先に出した店よりも、その店をチェックして後からさらに良いものを作れる後発の店の方が有利になる。ブランド戦略によりブランディングされた店の場合、先に出られてしまうと後から出店しても勝てない。だから皆さんにはぜひ先にブランドをつくって確立してほしい。
(ブランディングされたいくつかの具体例を紹介)。
ブランディングの5つの法則
ブランド力とは、消費者に会社(店)を連想させて購買につなげる力のこと。
コーヒーを飲みたいと思うと、Aへ行こうかなと連想する。Aのブランドが頭に刷り込まれているからだ。
コーラを目隠し調査すると圧倒的に支持されるのはBだが、実際にいつも買ってしまうのはCというのはCにブランド力があるからだ。
だからいくら美味しいものを開発しても必ずしも買ってもらえないし、ブランド力のある会社(店)に取られてしまう。
どうすればそういう力をつくれるのか。会社(店)がお金をかけずにブランドをつくるにはどうすればいいのか。
ブランディングの5つの法則とは①収縮②明快性③刷り込み④信用力⑤一貫性。
①収縮=特定の1商品に絞り込むこと。絞り込み、繰り返し変えないで刷り込んでいく。新製品で進めると失敗する。
ハンバーガーの店としてブランドを確立しているDには、たくさんのメニューがある。しかし、お客はというとほとんどハンバーガーを注文しないで、新製品やサイドメニューを食べている。ドリンク類はどこにでもあるものなのに、ブランド力があるからDで飲んでしまう。
②明快性=単純明快であること。Cは「本物・爽やか」、Dは「都会的・スタイリッシュ」のブランドイメージを刷り込んでいる。
③刷り込み=繰り返すこと。1回だけでなく打ち上げ花火のように次々と繰り返す。
④信用力=目に見えない信用力を可視化すること。行列をお客に見せるとか厨房をきれいにしてお客に見えるようにして信用力をつける。これに対し、口コミはこちらの思い通りにならないし、見えないので弱い。
⑤一貫性=ブランド商品を絞り込み、一貫した打ち出し方をすること。
業態やメニューを多様化すると、ブランドが拡散してしまう。
地域ブランドをつくる
地域ブランドをつくって成功した京都のお茶屋さんの実例がある。
このお茶屋さんは後発だったが、ネットで抹茶スイーツのブランドを構築した。
色の明度を統一した抹茶の緑色の画像を使い変えなかったことも成功の理由だろう。地元の材料を使い地元で支持される京都にしかない商品としての希少性も欠かせない。
地方のベーカリーがブランディングするには、地域に関連させた商品の絞り込み、刷り込みを行うことが必要。
そして地域のメディアあるいは全国ネットのテレビ局を使い浸透させていく。
ブランド戦略のキーポイントとなるのが広報活動。ブランドを確立するのにメディアの力は極めて重要だ。広報とはこちらの伝えたいことをメディアに代弁してもらうことで広告とは違う。広報と広告の真ん中に位置するのがプレスリリースで、そこからスタートするのが一番いいと思う。プレスリリースは、取り上げてもらえれば効果は大きいが、数が膨大なだけにいかに記者の目に留まるようにしてメディアに取り上げてもらうかが難しい。ダイユーではプレスリリース支援事業を開始して皆さんをお手伝いする。他にPR会社を使う方法もあるし、企画を制作会社に持ち込みテレビ放映につなげることもできる。
よく効果的といわれるSNSは多くの人を思い通りにできないし、仮に炎上した場合は、計り知れないマイナスが生じる。