海外でモノを売るのは簡単ではない
いろいろな機会に知り合った、商社を立ち上げた経営者の方が、世界で事業を展開している僕に、自分が抱えている商材のリストを送られてきて、
「これを、どこかの国で売れないでしょうか?」というような話を持ち込まれることが多々あります。
メーカーでない商社が、日本で2社以上入ってしまえば、輸出前の価格があがってしまいます。
そして何よりも、日本から出ずに、メーカーと他の商社との間をつなぐだけの安易な商流で、商品が売れるほど、海外でモノを売るのは簡単な話ではありません。
ですので、大体このようなお話は、僕はお断りしています。
海外で売れる商品の条件
海外マーケットで売れる日本の商品というのは、次の2つのうち、どちらかの特性を備えた商品だけです。
- 日本の市場で非常に売れているヒット商品で、外国人が注目をしている商品
- 各国の習慣や生活水準の中で、現地のニーズに適合し、かつ現地企業がそのニーズを解決するだけの水準や品質の商品を発売できていない商品
このうち、1の商品の輸出販売は、メーカーが独自に行っているか、あるいは、大手商社が、これをすでに行っている場合がほとんどで、僕たちのような中小専門商社がこれを扱えることは、ほぼありません。
そうなると、海外で売れる商機は、2のみです。
2の商機をつかむためには、日本でメーカー側が売りたい商品を抱えてもだめです。
海外の現地をみて、そこでの消費者の生活を観察し、かつ、そこで売られている商品のレベルをしっかりと観察する必要があります。
その中で、日本にはよいものがあるのに、現地にはないものを見つけだし、それを日本のメーカーに、直接、こちらから海外販売の条件のオファーと、サンプル商品の買い取りのオファーをします。サンプルを自分で購入して現地の販路に持ち込み、それを売り込みながら、販路を開拓する必要があります。
但し、それを無暗にやっても、駄目なのです。
海外に商品を本格的に送るためには、貿易を行う必要があり、かつそこには、貿易ならではのコストや日数がかかります。関税もかかりますし、日本からの輸出や、現地の輸入が規制されるものもあります。
そのため、上記の活動を行う前提として、海外でモノを売るための、貿易実務を含む、前提知識が自分のアタマの中になければなりません。
海外でモノを売る、というのは、簡単に低コストでできるようなことではないのです。
海外でモノを売るための、3つの知識と情報
では、ここで、海外でモノを売るために必要な知識や調査について、見ていきたいと思います。
- 貿易実務の知識
- 国際的な商品知識と情報
- 各市場に関する知識と情報
以下、それぞれの内容をみていきましょう。
貿易実務の知識
国の国境を越えて、モノを動かす貿易に不可欠な知識です。
世界の各国家には、法律や税制を独自に制定する権利、すなわち主権があります。そこで、主権国の法律や税制を持つ国をまたがって、モノを動かすために、世界には共通のルールがあります。
これが、貿易の知識です。
外航船や航空機による国際運送・保険・外国為替・通関など、その貿易のルールは、広範囲にわたって存在しており、これを知らずに貿易を行おうとすると、大変なミスを犯すことになります。
この国際貿易のルールは、各国でおおよそ共通のルールですので、このルールは、海外でモノを売る場合、体系的にきちんと学ぶ必要があります。
国際的な商品知識と情報
販売の対象となる商品に対する国際的な情報と知識が必要となります。
商品ごとの関税に関する各国の情報、輸出入に関する規制の情報、そして、販売対象国での商品の競合状況や、文化的・民族的・宗教的な受け入れに関する知識などが問われます。
貿易実務の知識は、国際的なルールであるため、日本の国内でも、学び習得することができますが、この国際的な商品情報は、現地で歩き、情報を収集する必要があります。
各市場に関する知識と情報
輸出をして販売する、対象エリアの市場に関する知識と情報を収集する必要があります。
これも、やはり、現地で歩いて情報を収集する必要があります。
僕は、モノを売りたい国や地域には、その前に数回、旅をします。本当は、一度、住んでみるのが理想ですが、さすがにグローバルな展開をする前に各国でそれを行うことはできません。そこで、旅をする際、その国に住んでいる日本語と現地語のバイリンガルの方に、ガイドを依頼して、そのガイドの方にご案内や現地語の通訳をお願いしながら、その国を見て回ることにしています。
僕は、このような旅は、ビジネスのミッション視察団で訪問をする時をのぞいては、必ず一人で旅をするようにしています。
そして、自分の気になる場所や、訪問したいエリアを、ガイドの方に事前にお知らせし、行動予定を立てていただきながら、回るようにしています。
海外の都市の場合、交通事情が日本ではわかりません。自分で勝手に視察計画を組むと、大変な交通渋滞に巻き込まれたり、スコールにあって身動きがとれなくなったり、交通機関の接続がわからなくなったりします。
現地に住んでいる方に、ガイドをお願いして、計画を立てていただくと、このような事態を避けられるだけでなく、様々な現地の生活の様子や課題をお聞きすることができます。
そして、同じ都市に数日滞在する場合、日ごとに、ガイドを変えます。
こうしていくうちに、非常に優れた方にガイドがあたり、結果的に、そういった方と、その後、契約を結んで、現地での一定の情報収集や、再訪問の際のガイドを依頼するような関係に立つことができます。
こうして、現地での生活や文化・食生活など、自分の目で確かめる中で、現地の生活の課題や現地にないものを見つけ出し、その商材を日本で仕入れて、現地へ販路を見つけていくのが、僕の海外販売の成功方法です。
世界で通用する知識と、国別・エリア別・顧客別に得なければならない知識
以上のように、世界でモノを売るためには、大きくわけて、貿易実務知識のような世界に共通するルールを習得することと、国際的な商品知識と情報や、各市場に関する知識と情報のように、現地を歩き、現地で情報収集をしないとならない知識や情報が、それぞれ必要です。
仮に、現地のディストリビューターへ大量にモノを卸すルートがあり、そのデュストリビューターが現地情報を把握していて、こちらは、日本で輸出業務だけを担当する貿易の場合は、現地を見て歩く必要はないと言われる方もおられるかもしれません。
しかし、現地のディストリビューターへの大量販売には、コンペチターが、すぐに横から入り込み、相当な価格競争力がないと継続的な取引はできません。
したがって、その場合でも、国際的な商品知識と情報や、各市場に関する知識と情報を怠ると、すぐに取引が打ち切られてしまうことになります。
特集「世界で売る」では、世界に通用する貿易実務知識を発信する
この特集、世界で売る では、世界で共通の貿易実務知識に関する情報を発信します。
貿易の実務は、世界に貿易で君臨したイギリスの慣行が中心になって成立しました。
そのため、世界でモノを売るためには、この貿易の知識と、貿易関連の書類(インボイスやパッキングリストなど)を英語で作成し、または、英語での書類を読めなければなりません。
貿易で使用する英語は、貿易に特有の英語の単語が多用され、かつ契約書などに使われる法律用語が理解できる必要があります。
実用英語検定試験の2級程度の実力をベースに、貿易や契約書に用いられる語彙力があれば、貿易は行えます。
尚、ビジネスの相手との商談交渉や、連絡のメールの交換が行えることも必須の実力です。
このような、貿易実務の基礎知識と、それを英語で行えるための情報を、この特集では発信して参ります。
国別・エリア別・顧客別に得なければならない知識は、国別の特集で発信する
そして、国別・エリア別・顧客別にえなければならない知識は、国別の特集の中で扱ってまいります。
是非、これらの情報を複合的に得ていただきながら、世界で売る実力を身に着けてください。
続く
本稿の著者
株式会社URVグローバルミッション 代表取締役
URV Global Mission Singapore PTE.LTD President
松本 尚典
- 米国公認会計士
- 総合旅行業務取扱管理者
米国での金融系コンサルタント業務を経験し、日本国内の大手企業の役員の歴任をえて、URVグローバルグループのホールディングス会社 株式会社URVプランニングサポーターズ(松本尚典が100%株主、代表取締役)を2015年に設立。
2023年5月に、総合商社・日本企業の海外進出支援事業を行う、株式会社URVグローバルミッション(本社 中央区京橋)を設立。
現在、日本が世界に誇れる食材の輸出を行い、同時に、世界への進出を目指す企業への、海外展示会支援・現地法人設立運営支援を行う事業を率いている。