ナレッジ経営で差別化を図る
師さん!
1つお聞きしてもよいでしょうか?
なんじゃの?
会社の経営資源って、ヒト・モノ・カネと言われますよね?
今、GAFAや、BATの台頭の時代に、データが、カネに代わる経営資源と言われ始めました。
データが、第四の経営資源としての「情報」と考えていいのですか?
そうじゃね。データが、経営資源として、圧倒的な注目を浴び始めたのは、AIが極めて重要になってきたことと関係があるのお。
AIは、ディープランニングを行うが、そのベースになるのがデータじゃ。
AIが、より優れた働きをするためには、膨大なデータが必要になる。このような膨大なデータを掌握できる企業の筆頭が、Googleや、Amazonというわけじゃ。
そうすると、中小企業の経営には、ビックデータは、あまり縁がないですよね?
中小企業にとっての、経営資源というのは、やはり依然、ヒト・モノ・カネなんでしょうか?
いやいや。それは違う。
中小企業であるからと言って、データが収集できないわけではないし、無関係であるわけではないのじゃ。
顧客データは営業行動に不可欠だし、例えばコールセンターに代表される会話なども、収集をすることで、ビックデータとなり、その分析によって、重要な経営上の情報となるのじゃ。
このような認識を持ってデータを武器に取り込む経営者と、漫然と現場的なオペレーションに終始する経営者とでは、中小企業といえども、「天の星と、地の屑」ほどの差が生じるのが、今の企業の経営者じゃ。
そうですか。
私の会社でも、あらゆるデータを、どう収集し、経営や営業に活かすか、最初から十分に考えていかないといけないのですね。
重要な要素「ナレッジ」
それと、同じ情報でも、もう一つ。
最初から考えておかねばならない「情報」がある。
「ナレッジ」じゃな。
ナ・レ・ッジ?
「知識」のことでしょうか?
Knowledgの日本語訳は「知識」じゃね。
しかし、経営用語としての「ナレッジ」は、寧ろ、日本語の「知恵」に近い。漢字で書けば、「智慧」のほうが、もっと近いかもしれん。
「知識」と「知恵・智慧」って、どう違うのですか?
学問的に言えば、「形式知」と「暗黙知」の違いじゃ。
ここに一つ、例を出そうかの。
ある溶接工場があるとする。この工場では、ベテランの溶接工が、業界でも信頼の高い溶接技術を持っていたとする。
この溶接技術は、「知識」かの?
えーと・・・。
溶接の「仕方」ですから、知識とは言わないような・・・。
そう。これは知識ではないし、勿論、データでもない。
しかし、この会社では、この溶接工の技術によって、付加価値の高い仕事を行い、そこに取引先が高い料金を払うとしたら、この技術は、間違いなく経営資源じゃ。
このような技術を、「ナレッジ」と経営の世界では呼ぶのじゃ。
そして、このような「ナレッジ」を従業員の中で育成したり、企業連合の中で提携して生みだしたり、その承継を他の従業員や次の世代にどう行うかを考えたりするのが、「ナレッジ経営」じゃ。
ナレッジとは、資格を得るための知識などではない。このような知識は、「ナレッジ」を生みだす基礎にはなるが、知識それ自体の記憶とアウトプットでは、コンピューターのほうが人間よりも、ずっと能力が高い。
今、まさに、資格士業のように「知識」を売り物にする業態が、最もIT化やAI化の脅威にさらされているのは、まさに、これが原因じゃ。
しかし、知識をベースに、それを技術や経験などの暗黙知に高めれば、それは、IT化やAI化に対する障壁となる。
AI時代に、生き残る弁護士は、司法試験で高得点をとった弁護士ではない。知識を基礎に、長年の法務の現場で、経験と知恵を身に着けてきた弁護士だということじゃ。
一方で、放っておくと、ナレッジは、「暗黙」知ゆえに、個人の範囲にとどまり、会社の経営資源として発揮することができにくいのじゃ。
有能な人材がいるのに、それを活用できない企業は、非常に多いわけじゃな。
だから、ナレッジをどうマネジメントするか、ナレッジを活用して、どう高い付加価値を生み出すのか、個人が有するナレッジをいかに企業として共有するか、企業経営にとって、非常に重要な経営課題になる。
そうか!
IT業や、デザイン業などは、ある意味、ナレッジを商品として、高い利益を出している典型的な企業といえるのですね。
その通りじゃ。
ナレッジの経営資源としての優位性は、「使っても、時間がたっても減らない」ことじゃ。
カネは使えばなくなる。
モノは原価償却とともに消耗する。
ヒトは年齢やモチベーションで使用期限がある。
これに対し、企業が獲得したナレッジは、いくら売っても、減らないのじゃ。
従って、中長期的に付加価値の高い事業で、安定的な経営を行うためには、データとともに、ナレッジをマネジメントすることが必要なのじゃ。
データとナレッジ。
これから、企業を経営する私たちには、とても重要な課題なのですね。
- 成功した社長に聞く!
- 成功した社長に聞く!
数々の有名リゾートホテルや、財界人の住宅の総合設計を手掛ける建築家、佐竹永太郎氏が率いるクリエーター企業
有限会社エスティエイアール(STAR) 代表取締役社長 佐竹永太郎

代表取締役で建築家の佐竹永太郎社長は、東北大学大学院工学研究科で都市建築学を専攻。その後、北川原温建築都市研究所をえて、2002年に独立。個人事業主としての独立から数えて、今年で創業17年。
積み上げた作品群は、建築家としての受注を遥かに超え、アーティストと呼べる領域に達している。
建築する施主の経営者から佐竹社長にご指名がかかる仕事だけを引き受けるという、他の競合を寄せ付けない、仕事の哲学をお聴きするため、東京北区の東十条にある、有限会社エスティエイアールのオフィスビルを訪問した。
続きを読む
1980年代のインターネット民間開放草創期から、IT技術者を率いてきた技術者社長に、ITとナレッジ経営を聴く
株式会社ドリームネット 代表取締役社長 田中紀治

代表取締役の田中紀治社長は、ITがオフコンと汎用機中心の時代から、コンピューターネットワーク開発と、システムコンサルタントのプロ集団を率いる会社経営者として、ITテクノロジーの進化を見つめ続けてきた、まさに、「時代の目撃者」。
ナレッジ経営者の代表選手のような田中社長にインタビューをするため、東京神谷町にある、株式会社ドリームネットを訪問した。
続きを読む