アメリカ東海岸最大のグルメ レッドロブスターは、実は害虫だった!

アメリカ東海岸を代表するグルメ レッドロブスターのご紹介

大西洋に面する、アメリカ東海岸には、アメリカ合衆国の政治や経済・学問を支える諸都市が連なっています。

経済の中心都市 ニューヨーク
学問の中心都市 ボストン
そして、合衆国政治の中心地 ワシントン

日本人の旅行者が圧倒的に多い、ハワイや、西海岸諸都市に比べると、東海岸の諸都市では、日本人を見かける比率は少なくなり、旅行でも、アメリカらしい雰囲気が味わえます。

そして、もともとが、イギリスからの独立戦争を勝ち抜いて独立したアメリカ合衆国は、この東海岸を発祥としているので、東海岸の諸都市は、とてもアメリカらしい表情を私たちに見せてくれます。

僕は、マサチューセッツ州のボストンにあるハーバート大学大学院で2年間を学び、その後、11年間にわたり、ニューヨークを本拠に仕事をしていました。ボストンや、ニューヨークの街は、それこそ、日本の渋谷や新宿と同じくらいに土地勘があります。

このような僕でも、日本人を案内して困るのが、食の問題。

よく、日本人旅行者の方々が言うように、
アメリカという国には、その土地ならではの美味しいものがない。
ことも事実で、これは東海岸でも同じです。

勿論、アメリカは世界一の経済大国ですし、国民の1%は、とてつもない富裕層ですから、おカネを出しさえすれば、世界中の美味しいものを食べさせるレストランはたくさんあります。

日本料理も、(日本人から観ると、びっくりするくらい高額ですが)日本で食べるのと同じように新鮮で美味なマグロや、活き造りを食べさせる店はあります。

ところが、アメリカならではの美食となると、なかなか難しいのです。アメリカ合衆国はピューリタン(新教徒)を中心とした欧米から渡ってきた移民が、経済的に非常に苦しい思いをしながら、開拓をして新しく創った国ですから、アメリカならではの美食というものがあまりありません。

でも、アメリカ東海岸の諸都市に、日本から14時間以上もかけて旅行をしたり、出張をしたりするならば、やはり、アメリカならではの、美味しいものを食べたいと思うのは、当然ですよね。

そんな方にお勧めの食が、ずばり、ロブスターです。

実は、ロブスターは、世界一、物価の高いアメリカ東海岸の諸都市の食で、日本で食べるよりもおいしくて安い、唯一のアメリカらしいリーゾナブルな食材なのです。

何故か、と言いますと、ロブスターは、大西洋岸のアメリカ諸都市では、昔は「害虫」だったからです(勿論、ロブスターは虫ではありませんが、わかりやすく、こう表現しました)。

アメリカ開拓民の食生活と、レッドロブスター

1492年に、スペインが派遣したコロンブスによって、はじめてアメリカ大陸は、「発見」され(もちろん、これはヨーロッパ人から観た観点に過ぎません)、その後、西ヨーロッパ各国がアメリカのエリアを植民地として、開拓民が続々とアメリカ大陸に渡りました。

彼らは、ヨーロッパから船で大航海の末に、西のアメリカ大陸に到達したわけですから、当然にまずはじめは、南北アメリカの東海岸に到達するわけです。

当時のマンハッタン島は、原生林に覆われていました。その原生林が、今でも、ニューヨークのセントラルパークに残っており、かつ、ニューヨークの国連本部の庭に生息している可愛いリスたちは、その原生林に野生でいた生き物の一種です。

開拓民たちは、その原生林だったエリアを切り開き、少しずつ耕作地や牧草地を作っていきました。

その当時、ニューヨークには、食べられる生き物が少なく、ヨーロッパ人たちが食していた牛や豚などの動物は、いませんでした。そこで、開拓民にとってマンハッタン島に生息していた、七面鳥が、ご馳走でした。

今、日本人は、クリスマスになると、チキンを食べますが、これは、もともと、キリストの誕生祭である聖夜を祝うヨーロッパの習慣にはなかったものです。

アメリカは、自分たちの先祖のアメリカ開拓民たちが、苦労してヨーロッパから新大陸にわたり、食べるものといえば、七面鳥がご馳走であった、という先祖の苦労に感謝をささげるため、アメリカの東海岸で生まれたクリスマスの習慣が、七面鳥を食べることでした。

敗戦後、アメリカのGHQの軍人たちが、クリスマスに七面鳥を食べているのを観た日本人が、その外見だけを真似て、クリスマスになぜか、チキンを食べる習慣を作ってしまったのです。そう、クリスマスに、何故か、スーパーにチキンが積まれ、ケンタッキーフライドチキンが、一年で一番売れるというのは、日本の「なんちゃっての、アメリカの真似」なのです。

さて、七面鳥に並んで、開拓民が食べたのが、ロブスターでした。

このロブスターは、ゆでるとあざやかな赤になるので、レッドロブスターと呼ばれています。

しかし、このロブスターは、アメリカ開拓民にとって、当初、とても迷惑な害虫でした。
大きなはさみがあり、漁をして生計をたてた開拓漁民にとって、魚を傷つけてしまう、困った生き物が、ロブスターでした。

しかも、開拓民が多く住まっていたボストン港あたりでは、このロブスターが大量発生し、漁民をとても苦しめていたのです。

これに対し、その大量発生する害虫の「ざりがに」を、魚のかわりに食べてしまえ、という考え方が生まれたのは、ひとえに、七面鳥くらいしか食糧がなかったアメリカ開拓民の貧しさ故でした。

日本では、伊勢海老が古代から、天照大神を祀る伊勢神宮に供えられる食として珍重されてきたのとは、アメリカのレッドロブスターを食べる習慣は、まったく違います。害虫しか食べ物がなかったために、害虫退治の意味もこめてやむなく食べたのが、アメリカのレッドロブスターです。

この七面鳥やロブスターを食べながら、開拓をしていった開拓民が、イギリス大英帝国の本国の選挙権を持たなかったため、イギリスは、彼らに重税をかけました。

その象徴が、お茶(紅茶)でして、イギリスは、アメリカ植民地にお茶を輸出して、そのお茶に重税をかけて、アメリカ開拓民を搾取しました。

これに怒ったアメリカ植民地の開拓民が、お茶をボストン港に投げ捨て(ボストン茶会事件)、独立戦争をイギリスと開始しました。

そして、独立を勝ち取って誕生したのが、アメリカ合衆国です。

そのため、アメリカ人のWASP(白人・アングロサクソン民族・プロテスタント派キリスト教徒という、アメリカ開拓民に子孫たち)は、いまだに、そのナショナリズムから、紅茶を絶対に飲まず、コーヒーしか飲みません。

こうして、クリスマスには、(ケンタッキーフライドチキンではなく)七面鳥を食べて先祖の苦労をしのび、害虫であるレッドロブスターを肴にビールで乾杯し、食後には紅茶を飲まずに、コーヒーを飲むという、アメリカ東海岸のWASPの食文化が生まれたのです。

ボストンのホテル名物の、レッドロブスターの食べ放題は、絶対のおすすめグルメ

ボストンのホテル名物の、レッドロブスターの食べ放題は、絶対のおすすめグルメ

このように、七面鳥やロブスターは、WASPのアメリカ人にとって、先祖の開拓の苦労をしのぶ食です。

今、僕たちが、クリスマスに七面鳥の丸焼きを食べても、お世辞にも、美味しいとは言えません。

しかし、一方、ロブスターのほうは、非常に美味しいと僕は思います。

ハーバード大学の経営大学院で学ぶため、僕は、2年間、このロブスターを開拓時代に食べ始めた都市であるボストンに住まっていました。

ハーバードをはじめとするアメリカの大学院に外国人が入るためには、大学を卒業して勉強ができるだけでは駄目で、一定の評価が高い企業で働き、そこから莫大な留学費用を社費で出して貰えるレベルの実績を積んでいなければなりません。

ハーバード大学の経営大学院(ビジネススクール)は、そのようなアメリカの大学院でも頂点に君臨する学校ですので、世界から集まっているビジネススクール生は、世界各国の超一流組織から選び抜かれた「知のオリンピック選手」のような人材ばかりです。

中国人であれば、父親が共産党の幹部で、かつ、最高峰の北京大学を出た最優秀な頭脳をもち、中国の最高峰の企業で最優秀の実績を残したような人。

アラブ人であれば、王族の子息で、国家機関が国の将来を担えると認めた超・エリートのような人。

このような人達ばかりが集まり、そこで、しのぎを削って、頭脳を磨くのが、ハーバードの大学院の内部の実態です。

ですから、学生は猛烈に勉強をしていましたが、皆さん、かなり裕福なのです。

僕も、日本の大手都市銀行の社費留学で米国にいきましたので、入学金や授業料、そして生活費は銀行が負担してくれていました(僕の場合、卒業後、日本の銀行に戻らず、ニューヨークの会計系コンサルティングファームに入りましたので、この銀行からの支援は、すべてその後返済をしましたが。)。

そこで、勉強の合間に、ハーバードの同級生と食事に行く場合、ボストンのホテルのレストランなどを使っていました。そのようなレストランの中で、僕が、最も気に入って、友人たちもこぞって食べにいったのが、ロブスターのビッフェスタイル(食べ放題)の店です。

ロブスターの食べ放題の店は、日本のビッフェとはかなり違います。

店のど真ん中に、大きなテーブルがあり、そこに、茹でられたレッドロブスターが、山盛りに積まれているのです。

各テーブルには、まるごとロブスターを好きなだけ、とってくるための、大きな皿と、すごい分量のマヨネーズが入った器が用意されます。

お客は、テーブルから、ロブスターを丸ごと、幾つも持ってきて、それを豪快に立ち割って、マヨネーズをたっぷりつけて、むしゃぶりつくのです。

ホテルのレストランですので、食事の値段は、それなりに高いのですが、食欲旺盛な大学院生にとって、かなり、お得な食事でした。

僕などは、ロブスターを、一食で、10匹以上たいらげ、ビールとともに、つかの間の勉強に疲れた精神の癒しと、世界から集まって来た学友たちとの交流を楽しむ場にしていました。

このようなロブスターの食べ放題の店は、ボストンが発祥なのですが、現在は、ニューヨークやワシントンなどにも、よく見かけるようになりました。

是非、皆さん。アメリカの東海岸に旅行や出張をされましたら、このアメリカ開拓時代から食べられていたロブスターというアメリカらしい食材に、食べ放題の店で、豪快にかぶりついてみてください。

続く

本稿の著者

松本 尚典
URVグローバルグループ 最高経営責任者兼CEO

松本 尚典

  • 米国公認会計士
  • 総合旅行業務取扱管理者

日本の大手メガバンクから社費留学で、米国の大学院に留学し、MBAを取得。
その後、ニューヨーク ウオール街で、金融系経営コンサルタントとして11年間、活躍する。米国公認会計士。
リーマンショックの前年、2007年に日本に帰国。
その後、自身で投資する企業をグループとして、URVグローバルグループのオーナー最高経営責任者に就任。現在も、世界各国の事業で活躍中。
URVグローバルグループでは、ニューヨークオフィスを開設し、日本企業のアメリカ進出支援事業を行っている。また、個人事業として、ハワイの希少コーヒーの対日独占輸入権も保有し、商社としての事業も継続している。